7月公開映画 短評 ―New Movies in Theaters―

  • 2019年07月03日更新

7月公開映画の中から、ミニシアライターが気になった作品をまとめてピックアップ! あなたが気になるのは、どの映画!?

LINE UP
7/6(土)公開 『サマーフィーリング
7/12(金)公開 『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢
7/19(金)公開 『ポラロイド
7/20(土)公開 『暁闇
7/26(金)公開 『モデル 雅子 を追う旅
7/27(土)公開 『北の果ての小さな村で

更新情報:7月18日に『ポラロイド』、7月26日に『モデル 雅子 を追う旅』を追加掲載しました。


『サマーフィーリング』

喪失から一歩踏み出すまでを描く3度の夏の物語

映画『サマーフィーリング』メイン画像

『アマンダと僕』で第31回東京国際映画祭グランプリと脚本賞を受賞したミカエル・アース監督作品。盛夏のベルリンで30歳のサシャは突然この世を去る。その死はサシャの恋人ローレンスとサシャの妹ゾエという見知らぬ者同士を出逢わせる。彼女がいない2度目の夏は深い悲しみが残るパリで。3度目の夏はニューヨーク。愛した人の思い出と美しい景色の中で、残された者たちは人生の光を取り戻していく……。大切な人を失っても人間は生きていかなければいけない。そんな普遍的なテーマが、夏の3都市で静かに綴られる。哀しみは残っているはずなのに、優しい“夏の感じ”がなぜか心と身体にすーっと染み込んでくる。(吉永くま)

2019年7月6日(土)より全国公開 公式サイト
(2015年/フランス・ドイツ/106分)原題:Ce sentiment de l‘été 監督:ミカエル・アース 出演:アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ジュディット・シュムラ、マリー・リヴィエール 配給:ブロードウェイ ©Nord-Ouest Films – Arte France Cinéma – Katuh Studio – Rhône-Alpes Cinéma


『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』

負け犬中年ウォーターボーイズが大奮闘!

映画『シンク・オア・スイム』メイン画像

フランスで動員400万人を突破した大ヒットヒューマンコメディ。とある公営プールが男子シンクロナイズド・スイミングのメンバーを募集。応募してきたのは皆、家庭・仕事・将来に何らかの不安がある悩める中年男性たちだった。彼らは元シンクロ選手のコーチのもと、トラブルに見舞われながらもトレーニングに励む。そして無謀にも、世界選手権で金メダルを目指すことになるのだが……!? 協調性や美と最もかけ離れている彼らが、こともあろうにそれらを競うシンクロに挑むという、このワクワク感。しまりのない体とプールの水との親和性が高まるにつれ、人生に疲れた顔が輝き始める。カッコ悪いのになぜか素敵なおじさんたちに目が釘付けに!「ルール・ザ・ワールド」など80年代の曲にもテンションが上がる。(吉永くま)

2019年7月12日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2018/フランス/122 分)原題:Le grand bain 英題:SINK OR SWIM 監督:ジル・ルルーシュ 出演:マチュー・アマルリック、ギョーム・カネ、ブノワ・ボールヴールド、ジャン=ユーグ・アングラード 配給:キノフィルムズ/⽊下グループ ©2018 -Tresor Films-Chi-Fou-Mi Productions-Cool industrie-Studiocanal-Tf1 Films Production-Artemis Productions

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『ポラロイド』

撮られたら最期! ヴィンテージカメラが呼ぶ死の恐怖

映画『ポラロイド』メイン画像本作と同日公開のリブート版『チャイルド・プレイ』のラース・クレヴバーグ監督作品。アンティークショップで入手したポラロイドカメラを入手したバード。この“新感覚”のカメラで撮影された若者たちが、次々と悲惨な死を遂げる。それらの写真に写り込むのは不気味な黒い影。彼らの死と何らかの関連があるのか……。ストーリーは主人公の友人たちが一人、また一人と殺されていく王道中の王道だが、ポラロイドをツールとするアイデアは斬新。彼らとともに「なぜ、何が」という謎を追いかけながら、加工という小細工がきかない前世紀の発明品だからこその恐怖を体験できる。(吉永くま)

2019年7月19日(金)より全国順次公開 公式サイト
(2017年/アメリカ/88分)原題:Polaroid 監督:ラース・クレヴバーグ 出演:キャサリン・プレスコット、グレイス・ザブリスキー、タイラー・ヤング 配給:ギャガ・プラス ©2019 DPC SUB 1A1,LLC


『暁闇』

寄る辺なく漂う10代の心模様と浮遊感溢れる音楽が溶け合う、珠玉の青春映画

映画『暁闇』メイン画像「MOOSIC LAB2018」長編部門の凖グランプリを受賞し、韓国の「全州国際映画祭」ワールドシネマスケープ部門に正式出品された、24歳の新鋭・阿部はりかの初監督作品。何に対しても無気力な少年コウ、放課後は見知らぬ男たちとつかの間の関係を持つユウカ、不器用にすれ違う両親の狭間で行き場のない悲しみを抱えるサキ。孤独を抱えた3人の中学生は、ネットで公開された音楽を通じて引き寄せられるように出会う。逆再生をベースに作られているというLOWPOPLTD.の浮遊感のあるサウンドと、刹那を永遠化する美しい映像が、寄る辺なく漂う登場人物たちの心模様に寄り添い、深く静かに胸を締め付ける。月の消えた夜明け前のほの暗くも淡い光を彷彿とさせる作品タイトル、3人の魅力と才能溢れるキャスト、阿部監督の柔らかくも鋭角なセンス。そのすべてが光を放つ、みずみずしい青春映画。(min)

2019年7月20日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2019年/日本/57分)監督・脚本・編集:阿部はりか 出演:中尾有伽、青木柚、越後はる香、水橋研二 ほか 配給:SPOTTED PRODUCTIONS

関連記事:『暁闇』— 阿部はりか監督 & 撮影・平見優子さんインタビュー


『モデル 雅子 を追う旅』

凛として生きた半生に迫るドキュメンタリー

2015年1月、稀少がん闘病の末に50歳の若さで人生の幕を閉じたモデル「雅子」の半生を、夫である大岡大介が追ったドキュメンタリー。妻の死に際し、「夫婦として共に生きながら、モデルとしての雅子をほとんど知らないまま」だったことに気づいた大岡は、「雅子」が登場した雑誌やビデオなどを片っ端から調べ、彼女を知る人々に監督としてインタビューを重ねてゆく。1984年に19歳でモデルデビューして以来、類いまれなる美しさで常に第一線に立ち続け、映画『リング』では貞子の母・志津子を演じるなど、女優としても活躍した「雅子」。モデルとして年齢の壁にぶつかったときや、痛々しい闘病生活のなかでさえも、常に事実とまっすぐに向き合い、凜として立ち向かった姿に感銘を受ける。そんな彼女が、夫の前だけで見せていた茶目っ気たっぷりの素顔は、ことさらチャーミングだった。被写体として多くのクリエイターたちにインスピレーションを与え続けた「雅子」。最期は最愛の夫の被写体となり、映像の中で永遠の愛と命を得た。(min)

2019年 7月26日(金)から UPLINK吉祥寺にて公開ほか全国順次公開
公式サイト  (2019年/日本/88分) 英題:Masako, mon ange 監督・プロデューサー:大岡大介 インタビュー出演(登場順):安珠、田村翔子、藤井かほり、髙嶋政宏、中田秀夫、石井たまよ、竹中直人 ほか 企画・製作 :スゴロクスタジオ 配給:フリーストーン ©︎2019 Masako, mon ange.


『北の果ての小さな村で

北極圏の村に赴任した頼りない教師の成長物語

映画『北の果ての小さな村』メイン画像

登場人物を本人たちが演じるリアリティにあふれる作品。グリーンランド東部の小さな村にデンマーク語教師アンダースが赴任する。言語や習慣の違いで授業はままならず、村でも孤立気味。そして自然は想像以上に過酷だ。そんな時、彼は狩猟のために学校を休んだ少年の家を叱るつもりで訪ねるが、少年の祖父母からこの地で暮らす者に必要な生活の知恵、さらにしなやかに強く生きていくための哲学を教えられる。自分の国の常識が世界の常識ではない。主人公が村の人を理解しようと努力し気持ちが通ったとき、彼を見守る私たちの心もほどける。普段なかなか知ることのない厳しい自然の中で営まれるイヌイット系先住民の生活も興味深い。(吉永くま)

2019年7月27日(土)より全国順次公開 公式サイト
(2017年/フランス/94分)原題:Une année polaire 英題:A POLAR YEAR 監督・撮影・脚本:サミュエル・コラルデ 出演:アンダース・ヴィーデゴー、アサー・ボアセン、チニツキラーク村の人々ほか 配給:ザジフィルムズ © 2018 Geko Films and France 3 Cinema

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