『BOX 袴田事件 命とは』完成披露試写会に、高橋伴明監督、萩原聖人さん、新井浩文さんが登壇!

  • 2010年05月28日更新

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2010年5月18日、『BOX 袴田事件 命とは』の完成披露試写会が有楽町朝日ホール(東京)にて行われ、高橋伴明監督、出演者の萩原聖人さん、新井浩文さんが舞台挨拶に登壇されました。また、袴田巌さんのお姉さま・袴田秀子さん、裁判官としてこの映画のモデルになった熊本典道さん、免田事件で逮捕から31年を経て無罪を勝ち取られた免田栄さんがゲストとして駆けつけました。

上の写真、左から、免田さん、熊本さん、袴田さん、萩原さん、新井さん、高橋監督です。

1966年に静岡県で実際に起こった「袴田事件」を映画化した、この作品。強盗・放火・殺人の容疑で死刑判決を受けた袴田巌死刑囚と、その支援者は、冤罪を訴えて、現在も再審を請求しています。

舞台挨拶では、会場全体が、1つ1つの言葉に聞き入っているという印象を受けました。
登壇者の方々の強い思いを、お伝えします。

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― まずは、お客様にご挨拶をお願いします。

高橋:この映画は、ワクワクする冒険でも、笑える映画でもない。非常に重い作品。ですが、こういう映画があるべきだと思い、1人でも多くの方に観て頂くべき映画だと思って作りました。

萩原:僕が俳優としてどうこうということではなく、残りの人生を生きていく上で、すごく大切なものを感じる事ができた作品です。

新井:笑いの「わ」の字もない映画です。ゆっくり堪能してください。

― 2010年8月に開催されるモントリオール世界映画祭のコンペティション部門に出品が決定との事で、おめでとうございます

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高橋:おそらく「『おくりびと』、『ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ』に、続けるのか」というところに関心はいくと思うんですけど、このような問題提起が前面に出た映画を選んでもらえた事を今は素直に喜びたいと思います。
結果はお楽しみにという事で。

― 昭和41年に起きた袴田事件を元にされていますが、この映画を作ることになったきっかけは?

高橋:私が高校1年生のときに起こった事件で、なんて酷い事をするやつがいるのかという印象でした。
そのまま記憶の片隅に埋もれていたかはわかりませんが、(袴田巌さんの)死刑判決を書いた熊本典道さんが2007年に世間に向けて「(袴田さんは)無実だったと思っている。大変申し訳なかった」と発言され、あぁ、そういう事件なのかと関心を持ったんです

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― 脚本を読まれた感想と、どのようにこの役を演じようとされたかを聞かせてください。

萩原:演じようというより、僕のキャリアでは決して伝えきれない、苦しみ・憤り・悲しみなど色々なものを背負った役なので、とにかく体当たりで監督の胸に飛び込みました。

新井:脚本を読んだ感想は、もう本当に、一言で言うと重い、重いなぁって。元ボクサーという役柄なので、体作りだけは徹底的にやりました。

― 萩原さんは裁判官の熊本さん役を、新井さんは袴田巌さん役を演じました。おふたりと一緒にお仕事をされていかがだったでしょうか?

高橋:萩原君は2001年に『光の雨』という映画で出演してもらいました。彼の仕事に対する誠実な向き合い方が素晴らしく、何に対しても一生懸命。彼はマージャンで有名ですが、哲学の領域に入っていますね。男女関係については述べません。(会場笑い) 裁判官である熊本さんの苦悩というものを、(萩原君の演技を見ていただければ)本当にわかってもらえると思います。
新井君は、何もしないでも、空気感が伝わってくる妙な俳優さんです。何よりも、犯人っぽいのがいいなぁっ、と思って。本当に最初は犯人に見えると思います。(会場笑い)

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― この映画に込めた思いをお聞かせ頂けますか?

高橋:人は間違うという事。職業人がやっても間違いを起こす。そして各々の組織が持つ問題点、メディアによって我々一般人が勝手に作り上げてしまう、作られてしまう怖さを感じて頂きたい。判断が間違ったとして、皆さんが冤罪を作り出したら、熊本さんのように残りの一生を苦しみ抜かなければいけないという事を考えて頂きたい。冤罪は、人が犯す罪の中でもっとも重い罪だと私は考えています。皆さんも考えながら観てください。

さらにゲストとして、袴田巌さんのお姉さま、袴田秀子さん、裁判官としてこの映画のモデルになった熊本典道さん、1948年に起こった免田事件で逮捕から31年を経て、冤罪事件として実際に無罪を勝ち取られた、免田栄さんが登壇されました。

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― この映画、そして袴田事件について伺えますでしょうか?

袴田:今年の5月13日に(袴田厳さんに)面会に行きました。面会時間の都合上、(映画の事は)途中までしか話せませんでしたが、聞きたがっていたと思います。大変関心を持っていると思います。(この作品は)大変よい映画だと思います。(袴田巌さんの母・きぬ役を演じた)吉村実子さんが裁判所で「巌っ!」と言う場面がとても印象に残りました。

熊本:私が問題の熊本です。裁判官という立場でありながら、守秘義務を捨て、喋った事が今日に糸をひいている状況ですが、抗議の手紙も何もありません。彼の無罪だとは結論づけられなかった……今日に至るまでなお、無罪だと思っています。(袴田さんを)獄中から救うために、一生、心を注いで行きたいと思います。

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免田:「日本では立派な司法行政がおこなわれている」と思っておられる方が大半でございます。しかし、一番怖く驚いたのは、証人・証拠隠し、証人偽造という、私達の社会では考えてもできない事が、司法の社会では公然とされているということです。その司法と34年間戦って、(獄中から)出てきました。獄中生活は私にとっては非常に大きな財産であり、心の支えです。

舞台挨拶後、高橋監督、袴田秀子さん、熊本典道さん、免田栄さんの囲み取材が行われました。

質問:今夏のモントリオール世界映画祭に向けて一言お願いします。
高橋:日本の司法行政の実態を知って欲しい。人は間違うという事は普遍的なので。こういう事件を通して、映画を通して人間の危うさをアピールしたいと思っています。

質問:この映画を、袴田厳さんに観て欲しいですか?
高橋:観る事が可能であれば観てほしいですが、それよりも早く再審が始まって欲しい。世間で会えたほうが嬉しいです。

質問:実際の厳さんと、(巌さんを演じた)新井さんとの共通点はありますか?
袴田:(巌さんは)無口な人間なので・・・・・・、無表情なところは探り出して頂いたかなと思います。

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質問:映画が完成した時のご感想をお願いします。
熊本:袴田君の釈放の為に、何とか役に立てばと思いました。

質問:作品の見所や、思い入れのあるシーンはありますか?
高橋:ラストシーンです。裁く側と裁かれた側が1つになるというところです。あの中に自分なりのメッセージがあります。袴田さんの手紙に「思い切り走りたい」とありました。叶わない今、映画の中だけど思い切り走ってもらえたかなと思っています。その辺を観てもらいたいです。

この作品を観る事は「考える」という意味であると筆者は感じました。
起きてはいけない「冤罪」。今なお、懸命に無実を訴え続けている皆さんの言葉に、心を動かされました。
そして、裁判員制度とは人を裁く事に繋がるという実感。
この作品に込められた、考えなければいけない問題と私たちも向き合うべきです。

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▼『BOX 袴田事件 命とは』
作品・公開情報

日本/2010年/117分/35mm/DTSステレオ
監督:高橋伴明
出演:萩原聖人 新井浩文 石橋 凌
葉月里緒奈 村野武範 保阪尚希
ダンカン 須賀貴匡 中村優子
雛形あきこ 大杉 漣 國村 隼 志村東吾
吉村実子 岸部一徳 塩見三省 他
制作プロダクション:ブリックス
製作:BOX製作プロジェクト
配給:スローラーナー
企画:忠叡
脚本:夏井辰徳 高橋伴明
撮影:林淳一郎(J.S.C)
音楽:林祐介
クレジット:(C)BOX製作プロジェクト2010
『BOX 袴田事件 命とは』公式サイト
※2010年5月29日(土)より、渋谷・ユーロスペース(東京)、銀座シネパトス(東京)にてロードショー。シネ・リーブル梅田(大阪)、京都シネマ(京都)他、全国順次公開。

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『BOX 袴田事件 命とは』 新井浩文さん インタビュー

取材・文・スチール撮影:南野こずえ
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