『森崎書店の日々』

  • 2010年11月02日更新

morisakimain

「古本屋さんで暮らしてみたいなぁ」 ― 本の虫なら誰でも、そんなふうに夢想したことが、一度や二度はあるのではなかろうか。

とはいえ、『森崎書店の日々』の主人公・貴子(菊池亜希子)は、活字中毒でも、古書店になじみがあるわけでもなかったのだが。

社内恋愛でつきあって1年半になる恋人と食事をしていた貴子は、「結婚することになった」と彼から告げられる。そのときになって初めて、自分が二股をかけられていて、それも本命とは思われていなかったと知った。やむを得ず会社をやめて、途方と悲しみに暮れている貴子のもとへ、叔父のサトル(内藤剛志)から1本の電話がはいる。「うちの古本屋の2階に住んでいいよ」と言うサトルは、古書の街・神保町で、「森崎書店」を営んでいるのだ。特に気乗りもしないまま、古本屋で借り暮らしをすることになった貴子だが……。

神田・神保町でロケがおこなわれた本作のもうひとつの主人公は、「神保町そのもの」である。

実在する書店、実在する喫茶店(カフェ、とは呼びたくない)、実在する町並み ― 神保町をよく知る人なら、「ああ、ここはあそこだ」と、スクリーンを見ながら、何度も微笑んでしまうことだろう。また、神保町を訪れたことがない人も、まるで古くからこの町を知っていたかのように、親近感をいだくかもしれない。古書も、人々も、温かくそこに在るが、押しつけがましさはないのである。新参者の貴子も、神保町に、「おかえりさない」と笑顔で迎えてもらえたような気持ちになったはずだ。

仕事も恋も覇気も失った貴子は、サトルに薦められるままに古書を読みふけり、神保町の住人としてなじんでいく。時間、町、人、そして、本が癒してくれれば、視界も心も、おのずとクリアになってくるのかもしれない。ゆっくりと、だが、確実に、「立ち直るためのかけらたち」を、貴子はひとつずつ手にしていくことになる。

《ロケ地をめぐるスタンプラリー、開催中!》
神保町が総出で公開を祝している『森崎書店の日々』。神保町のフリーペーパー「おさんぽ神保町」では、ロケ地をめぐるスタンプラリーを開催中です!(2010年11月20日まで)
神保町にある6ヶ所のスタンプをコンプリートしたかたの中から抽選で、下記の商品をプレゼント!
●主演女優・菊池亜希子さんの本『みちくさ』小学館刊(5名様)
●原作『森崎書店の日々』小学館文庫(5名様)
※詳細は、「おさんぽ神保町」・映画『森崎書店の日々』ロケ地をめぐるスタンプラリー!!開催」をご参照ください。

▼『森崎書店の日々』作品・公開情報
日本/2010年/109分
監督:日向朝子
原作:八木沢里志『森崎書店の日々』 (小学館文庫)
出演:菊池亜希子 内藤剛志 田中麗奈 他
配給:ファントム・フィルム
コピーライト:(C)2010 千代田区/『森崎書店の日々』製作委員会
『森崎書店の日々』公式サイト
※2010年10月23日(土)より、神保町シアター、シネセゾン渋谷他にて全国順次公開!

《原作はこちら》

森崎書店の日々 (小学館文庫) 第3回ちよだ文学賞大賞受賞作品
小学館文庫『森崎書店の日々』 著/八木沢里志
定価500円(税込) 好評発売中 小学館

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文:香ん乃
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