『海炭市叙景』の熊切和嘉監督とキャストが挨拶!―第23回 東京国際映画祭 記者会見

  • 2010年10月02日更新

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今年で23回目の開催となる東京国際映画祭。”TIFF”の愛称で親しまれているこの映画祭の名前を耳にすると、「秋も深まってきたなぁ」と実感する映画ファンは多いのではないでしょうか。

第23回 東京国際映画祭の開催期間は、2010年10月23日(土)~31日(日)。それに先だって、9月30日(木)に六本木ヒルズにて記者会見がおこなわれ、コンペティション、特別招待作品はもちろん、「アジアの風」部門、「日本映画・ある視点」部門など、話題作目白押しのラインナップが発表されました。

ラインナップの詳細は東京国際映画祭の公式サイトでじっくりご確認いただくとして、この記事では、記者会見にゲストとして登場した『海炭市叙景』の熊切和嘉監督とキャストのみなさまのお話を徹底リポート致します。上の写真、左から、竹原ピストルさん、南果歩さん、谷村美月さん、熊切監督です。

コンペティションに出品の『海炭市叙景』は、この映画祭での上映がワールド・プレミアとなります。小説家・佐藤泰志氏の幻の小説が、熊切監督のメガフォンで映画化されました。「海炭市」は架空の地名ですが、北海道の函館市で撮影がおこなわれ、函館市民のみなさまの多大なるご協力を得て完成した作品です。
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Kaitanshi-jokei_MAIN小 ▼『海炭市叙景』
日本/2010年/152分
監督:熊切和嘉
配給:スローラーナー
コピーライト:(C)2010 佐藤泰志/『海炭市叙景』製作委員会

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― 東京国際映画祭のコンペティションに選ばれた、今の気持ちは?

熊切和嘉監督(以下、熊切) 2年前に、前作の『ノン子36歳 (家事手伝い)』で函館港イルミナシオン映画祭に参加したときに、(函館にある映画館の)シネマアイリスの代表・菅原和博さんと知りあったのがきっかけで、『海炭市叙景』を映画化する企画が始まりました。本当に小さな出会いから始まった作品が、こうして大きな映画祭で上映していただけることになって、とても嬉しく思っています。

谷村美月さん(以下、谷村) (私がこれまで出演してきた映画よりも)撮影期間は短かったのですが、函館の地元のみなさまと一緒に作った、温かい作品になりました。ひとりでも多くのかたに観ていただきたいです。

南果歩さん(以下、南) 市民参加型の作品で、函館のみなさまの熱情に支えられて撮影しました。この作品が東京国際映画祭のコンペティションに選ばれて、世界へ向けて発信できるという喜びを、函館のかたがたと一緒に分かちあいたいと思います。

― 函館市民のみなさまのご協力と励ましが大きかった作品ですね。

熊切 そうですね。函館のかたがたに、なにからなにまで協力していただけました。函館の町と原作者の佐藤泰志さんに対する思いが地元のみなさまにあったからこそだと思いますが、(おかげさまで)僕は本当に好き勝手に撮らせていただけた感じです。

― 撮影にあたって、苦労したことは?

熊切 僕のこれまでの作品では、ひとりの主人公を掘り下げていくことが多かったのですが、今回は主人公が大勢いる物語なので、(今までの作品よりも)何倍も時間がかかったのが大変でした。

― 複数の主人公を、同じトーンで描くにあたって、意識した点は?

熊切 その人物がそこで本当に暮らしているように見せることを、最も重視しました。また、映画の前後にも彼らの人生がある、と感じてもらえるように撮りたいと意識しました。それはうまくいったと思っています。

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― 谷村さんは、熊切監督とお仕事をして、いかがでしたか? また、印象に残っているシーンは?

谷村 熊切監督の現場は、(俳優が)ただそこに存在して、「演じよう、演じよう」としなくてよいという不思議な空間でした。でも、とても居心地がよかったです。

印象に残っているのは、朝日を見るシーンです。近頃の映画はCGなどでいろいろな映像が作れますが、今回の現場は、朝日が出なかったら翌日以降に同じ場所に行って(朝日が出るのを待って)撮影をするというやりかたで進みました。実際にその場に立って朝日を見て、感じたままに演じればよいというのは、本当に心地よくて、とても印象的でした。

― 熊切監督とお仕事をすることが多い竹原さんですが、今回の現場での監督はいかがでしたか?

竹原ピストルさん 監督とは普段から一緒に遊ぶ機会もあって、仲よくさせていただいているので、ちょっとおこがましい言いかたになってしまうかもしれませんが(笑)。今回は故郷*での撮影だったのもあってか、にこにこしていて、楽しそうでした。これまでの作品の現場でもにこやかでしたが、今回は更にわくわくしていらっしゃるような感じがしました。 *:熊切監督は、北海道帯広市出身。

― 南さんの息子役を演じた少年は、函館でのオーディションで選ばれたんですよね。

 彼は札幌高校の演劇部の部長なんです。寒い土地で育った独特の空気を持っている少年でした。

今回の作品では、熊切監督がとても時間をかけて、地元のかたがたのオーディションをおこないました。加瀬亮さんの息子役を演じた少年も、そうやって選ばれました。こうして、いろいろな形で、プロの俳優たちと地元のかたがたが、よいマーブル状に絡みあっています。

函館という場所ですべてを撮影して、そのとき・その瞬間をフィルムに焼きつけることの意味、温度、空気が、映画の中にすべて詰まっています。私たち俳優も、その中に存在できて、とても幸せでした。なにより、熊切監督が意図した「その土地に生きている、さまざまな人たちを映しだす」という撮りかたができて、地元のみなさまとの交流もあり、本当に幸せな形で誕生した映画だと思っています。

― 冬の寒い中での撮影は、大変ではありませんでしたか?

 寒い土地ですけれども、人々の心や、この映画に参加してくださるかたがたの熱意がありました。

― 最後に、この映画をご覧になるかたへ、熊切監督からメッセージをお願いします。

熊切 とある地方都市の現実と、そこで暮らす人々の生きざまを描いた映画です。多くのかたがたに観ていただいて、なにかを感じとっていただけたら、と思います。

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▼第23回 東京国際映画祭 開催情報
期間:2010年10月23日(土)~31日(日)
会場:六本木ヒルズ 他
主催:公益財団法人 ユニジャパン(第23回 東京国際映画祭実行委員会)
東京国際映画祭 公式サイト
※上映スケジュール、チケット購入方法等の詳細は、上記の公式サイトをご参照ください。

取材・編集・文:香ん乃 取材・編集:吉永くま
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