『ザ・ヴァンパイア~残酷な牙を持つ少女~』-斬新な視点が光るイランを舞台にしたヴァンパイア映画

  • 2015年09月21日更新

東欧のイスラム世界にも吸血鬼伝説はあるものの、十字架や聖水など、キリスト教と関連するイメージが強いヴァンパイア。だが、注目のイラン系新人監督アナ・リリ・アミリプールは、チャドルに身を包み男たちに襲いかかる美しいヴァンパイアを誕生させた。モノクロ映像と全編を流れる音楽が印象的な本作は、デヴィッド・リンチや初期のジム・ジャームッシュの作品と比較されることが多いというが、その世界観は独特かつ斬新で、高い評価を受けている。



チャドルを纏ったヴァンパイアと青年の恋の行方は
イランのどこかにある街バッド・シティを根城にするのは、ジャンキーやポン引き、娼婦だけではない。暗く絶望に満ちた街角に、ふいに現れるチャドルを纏った大きな瞳の少女。彼女は街の男たちの喉元に噛み付いて血を吸う、鋭い牙を持つヴァンパイアだった。ある晩、彼女は孤独な青年アラシュと運命的な出会いをする。ヴァンパイアと青年の恋に未来はあるのか? 2人をつなぐ人間に降りかかった事件は、彼らの今後に影響を与えるのだろうか?



時代も空間も超越した唯一無二のバッド・シティ
ボーダーシャツの上に黒衣を羽織ったヴァンパイア少女は、通りをスケートボードで移動する。街の若者たちはハロウィンパーティーに興じる。青年は携帯を使い、少女はレコードに針を落とす。ソフィア・ローレンやジェームズ・ディーンからヒントを得たという登場人物たち。そこはイランでもなくアメリカでもなく、1950年代でも2010年代もない。バッド・シティという街自体が不思議な存在感を醸し、残酷で美しい「ここではないどこか」へといざなってくれる。



生々しさを抑えた無彩色のファンタジー世界
白と黒の世界は煙を吐き出す工場地帯や荒廃した街の寂寥感を煽り、犠牲者の喉元から滴り落ちる血の生々しさを和らげる。抑制されたトーンにさまざまな想像を掻き立てられるのも、この作品の醍醐味のひとつ。どうやらアミリプール監督の術中にはまってしまったようだ。



▼『ザ・ヴァンパイア~残酷な牙を持つ少女~』作品・公開情報
原題 A GIRL WALKS HOME ALONE AT NIGHT
2014年/101分/モノクロ/アメリカ/ペルシャ語
監督:アナ・リリ・アミリプール
製作総指揮:イライジャ・ウッド
出演:シェイラ・ヴァンド(『アルゴ』)、アラシュ・マランディ
配給:ギャガ・プラス
『ザ・ヴァンパイア~残酷な牙を持つ少女~』公式HP

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9月19日(土) 新宿シネマカリテ他全国公開

  • 2015年09月21日更新

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