『カフェ・ド・フロール』〜時を越えて紡がれる愛。情熱、そして嫉妬と哀しみ〜

  • 2015年03月29日更新

人は出会った瞬間に、雷に打たれたように恋に落ち、運命の相手だと確信することがある。1969年のパリに生きる母と息子、そして現代のモントリオールの男と女。異なる二つの時代に生きる人々の、時を越えた愛と情熱、幸福と悲劇が交錯する。やがて彼らの運命は思いもよらぬ結末へ……。ヴァネッサ・パラディを主演に『ダラス・バイヤーズクラブ』のジャン=マルク・ヴァレが監督。ミュージシャンであるケヴィン・パランや「最高の子役」と監督に評されたマラン・ゲリエなど、その他の出演者の確かな存在感も印象的だ。
3/28(土)よりYEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
© 2011 Productions Café de Flore inc. / Monkey Pack Films


1969年パリに生きる親子の絆。現代のモントリオールでの運命の恋。二つの世界が交わる、愛の奇跡。
1969年、パリ。ジャクリーヌ(ヴァネッサ・パラディ)は障害を抱える幼い息子ローラン(マラン・ゲリエ)に深い愛情を注ぎ、女手一つで育てている。ある日、ローランはクラスに転入して来た少女ヴェラと目を合わせた瞬間から惹かれ合って離れなくなる。このことが学校で問題化し、ジャクリーヌは困惑する……。時は変わって現代のモントリオール。40代の男性アントワーヌ(ケヴィン・パラン)はDJを生業として成功し、ブロンドのセクシーなローズ(エヴリーヌ・ブロシュ)と運命の愛を育み、幸福に満ちていた。しかし前妻キャロル(エレーヌ・フローラン)はアントワーヌとの離婚から立ち直れず、アントワーヌは娘たちから反発を買っている。さらにキャロルは、夜な夜な苦悶の表情をうかべながら徘徊する夢遊病に悩んでいた……。1969年のパリと、現代のモントリオールに生きる人々の、決して交わるはずのなかった二つの世界。名曲「カフェ・ド・フロール」を接点に、愛の奇跡が発覚し、やがて衝撃と感動の結末へとつながっていく。


愛情深いの素顔が垣間見えるヴァネッサ・パラディ。新たな才能を開花させたケヴィン・パラン。
気丈な母親の役を演じるヴァネッサ・パラディ。私生活でも母親を経験したヴァネッサの、情愛あふれる母性と円熟味は、従来ファンを切なくも嬉しくもさせるだろう。息子役のマラン・ゲリエ君は魂に突き動かされる激情までも好演、観るもの心を揺さぶる。この2人の確かな絆を感じさせる共演シーン、その多くがアドリブだというのも感慨深い。またミュージシャンであるケヴィン・パランが今回、映画に初挑戦しながら、DJという設定を手がかりに、まったく気負うことなくスンナリ役にとけ込んでいる。宿命に翻弄され漂うような役どころでありながら、しっかりと存在感を見せた。映画監督としても活躍する実力派エレーヌ・フローランは、離婚に傷つき闇の中をさまよう女性・キャロルを感受性豊かに演じ、観る者を引きつけ、作品の説得性を支える。


避けがたい宿命には悲劇をはらんでいる可能性もある。これは「愛」そして「許し」の物語。
人生には最高のひとときもあれは最悪の瞬間もある。二つの世界で始まり、たどり着いた登場人物のそれぞれの関係。彼女らには共通点も見られず、まったく別の話であるように進行していくが、そこには時空を超えたつながりが。人生に追いつめられ苦しむ人は、思いもよらぬ方向から救われる。「愛」そして「許し」の物語である本作では、劇中の楽曲も重要な役割を担う。作品タイトルでもあり、象徴的な曲として登場する「カフェ・ド・フロール」をはじめ、ピンク・フロイド、シガー・ロス、ザ・キュアーなど、イギリスやアイスランドのロック曲が多数登場。ジャン=マルク・ヴァレ監督のこだわりの選曲が、この作品を味わい深くしている。



▼『カフェ・ド・フロール』作品・公開情報
2011年/カナダ・フランス/カラー/英語・フランス語/シネスコ/5.1ch/120分
原題:Café de Flore
監督・脚本:ジャン=マルク・ヴァレ(『ダラス・バイヤーズクラブ』)
撮影:ピエール・コットロー
出演:ヴァネッサ・パラディ、ケヴィン・パラン、エレーヌ・フローラン、エヴリーヌ・ブロシュ、マラン・ゲリエ ほか
配給:ファインフィルムズ
●『カフェ・ド・フロール』公式サイト

3/28(土)よりYEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
© 2011 Productions Café de Flore inc. / Monkey Pack Films

文:市川はるひ

  • 2015年03月29日更新

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