観客賞受賞マフマルバフ監督「映画はこの暴力的な世界に平和のメッセージを伝える大きな力を持っている「― 第15回東京フィルメックス』授賞式

  • 2014年12月01日更新

11月29日(土)、第15回 東京フィルメックスのクロージングセレモニーがおこなわれ、各賞が発表され、コンペティション作品9本の中からフィリピンのフランシス・セイビヤー・パション監督の「クロコダイル」が最優秀作品賞に選出されました。各賞の喜びの声を記者会家・授賞式からリポートします。






最優秀作品賞『クロコダイル』 監督:フランシス・セイビヤー・パション
(最優秀作品賞の)受賞に大変驚いています。2010年に(東京フィルメックスの)ネクストマスターコースに参加していますが、その際にルームメイトであるアンソニー・チェンが最優秀作品賞を受賞しました。偶然にもそのアンソニー・チェンの作品に出ていたアンジェリ・バヤニが今回『クロコダイル』にも出演しています。今回のフィルメックスで最初に観た作品は私の大好きな作品『セントラル・ステーション』のウォルター・サレス監督作品である『ジャ・ジャンクー、フェンヤンの子』でした。私は(作品を観て)泣いてしまいました。そのジャ・ジャンクー監督が『クロコダイル』を観ていることはワクワクしました。賞を取りたいと祈っておりました。

この物語は実話に基づく物語です。いただきました賞金につきましては一部この実話のモデルになったご家族、そしてアブサンに送らせていただきたいと思っています。この地域のもつ環境や文化、この地域の美しさを映し出すことでマノボの地域について知る機会になったのではないかと思います。



『クロコダイル』 Crocodile / Bwaya
フィリピン / 2014 / 88分
監督:フランシス・セイビヤー・パション(Francis Xavier PASION)







審査員特別賞『彼女のそばで』 監督:アサフ・コルマン
(コルマン監督はすでに帰国されたため、林加奈子東京フィルメックスディレクターが代理で受賞およびコメントを代読)
私と脚本と主演を担当した、妻リロン(・ベン・シュルシュ)が身体障害をもつ姉妹の傍らで育った彼女の経験をもとにこの作品を作ろうと決心したとき、私たちはなにかを勝ち取れるとは思ってもいませんでした。私たちのもっとも野心的な夢は映画のための資金を見つけることだったのですから。私たち社会が継続的に直面している政治的問題を扱っていないこの作品が、ここ最近のイスラエル映画のように成功できるかどうか心配していました。東京フィルメックスにこの作品が招待され、この美しい映画祭と街で素晴らしい時間を過ごしたことは私にとってすでに大きな賞であり、映画の力の証明でもありました。映画と映画理論の達人である今回の審査員の皆様の表彰はもうこの世のものとは思えません。審査員であるジャ・ジャンクー監督をはじめとする審査員の皆様と林加奈子ディレクター、神谷直希さん、映画祭のスタッフのみなさんに心から感謝します。



『彼女のそばで』 Next to Her
イスラエル / 2014 / 90分
監督:アサフ・コルマン (Asaf KORMAN)







スペシャル・メンション 『シャドウデイズ』監督:チャオ・ダーヨン
今回東京フィルメックスに参加できたこと、また、皆さんとともに様々な映画を楽しめたということはうれしいことでした。スペシャルメンションという形で認めていただいた言うことで(映画を)撮り続ける確信が持てました。これからもいい映画を皆さんに見ていただけるようによい作品を撮り続けていきたいと思っています。これが私の人生に求めるものであって、人生の目標でもあります。ありがとうございました。









『シャドウデイズ』 Shadow Days / 鬼日子
中国 / 2014 / 95分
監督:チャオ・ダーヨン(ZHAO Dayong)









観客賞 『プレジデント』 監督:モフセン・マフマルバフ
(マフマルバフ監督欠席のため、配給会社である株式会社シンカ代表取締役のスージュンさんが代理で受賞、コメントをショーレ・ゴルパリアンさん代読)
マフマルバフ監督は現在ロンドンにいらっしゃいます。朝の4時、受賞の知らせを受けた息子さんに起こされコメントを用意されたそうです。
映画を愛し、平和を愛する日本の方々へ今日、この賞をいただくときに、皆さんの目を見て、日本の観客の皆様が愛し、感謝していると伝えたかったです。映画のメッセージ与えられた観客賞は非常に大きな意味があります。人間はお互い殺しあうために生まれたわけではありません。地球の上に生まれてきたのはお互いを愛するためだと思います。しかし現在、この世界には暴力があふれています。30億年かかりつくられた様々な命が、たったこの30年間で人間の手によって破壊されました。エボラと戦うために5,000人の助けが必要だという国連の声に応える人数はとても少なかったですが、IS(イスラーム国)が起こす暴力的な作戦のために15,000人の人が集まりました。世界の暴力に命さえ差し出すことが多いことを示しています。これには大きな理由があると思います。平和を大切にするという文化の存在が弱いということです。芸術、特に映画はこの暴力的な世界に平和のメッセージを伝える大きな力を持っていると思います。



『プレジデント』 The President
グルジア、フランス、UK、ドイツ / 2014 / 119分
監督:モフセン・マフマルバフ (Mohsen MAKHMALBAF)
配給:シンカ







学生審査員賞 『彼女のそばで』 監督:アサフ・コルマン
(コルマン監督はすでに帰国されたため、林加奈子東京フィルメックスディレクターが代理で受賞およびコメントを代読)
この賞をいただけるのは名誉なことです。私自身もイスラエルで映画を教えているのですが若く、熱意ある映画学生の高度な要求にこたえ続けることは大変であるということを知っているからです。新旧の日本映画ファンとしてこの賞は将来の日本の巨匠になるかもしれない人々からの特別な表彰なのです。『彼女のそばでは』私にとって、愛の行為であり、それがあなた方の心に響いたことをうれしく思います。




ジャ・ジャンクー監督による総評
受賞された監督の皆さんには心からお祝い申し上げます。うれしかったのはモフセン・マフマルバフ監督の『プレジデント』が観客賞を受賞したことです。監督は故郷に帰ることができないですが、しかし映画を撮り続けています。こういう監督が映画を発表する場として映画祭は重要になってきます。東京フィルメックスは必要な場であります。
コンペティション部門に参加した9本は啓発を受けるレベルの高い作品ばかりでした。コンペティションの作品を観ることによってその国独特の社会状況や人間関係、また若い監督たちのものの見方、映画の新しいスタイルについても知ることができました。東京フィルメックスがアジアの新しい才能のために機能し続けることを祈っています。映画製作に携わる者たちが出会い、語り合い、気持ちを通わせて、理解を深めていくということが東京フィルメックスの役割だと思います。これから皆さんが良い映画を作り続けられると信じています。ですから私は焦っています。皆さんに負けないようないい映画を撮っていかなくてはいけないと感じています。私もよい作品を持って東京フィルメックスに参加できたらと思っております。みなさんどうもありがとうございました。

文・編集・撮影:白玉

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