『HICK ―ルリ13歳の旅』―少女の理想と現実との隔たりはこんなにも大きい

  • 2012年12月21日更新

2010年に公開された、『キック・アス』(マシュー・ヴォーン監督)で、放送禁止用語を連発するヒット・ガールを演じ、同年公開の『モールス』(マット・リーヴス監督)では、寂しげな表情のヴァンパイア役で注目を集めたクロエ・グレース・モレッツ。これまで、クールで大人びた少女を演じることが多かったクロエだが、初の単独主演作品である、『HICK ―ルリ13歳の旅』では、自意識過剰で不安定な思春期の少女を演じている。美しい絵の世界や作り物の物語に逃避していた少女が、現実と向き合ったとき、どう変化するのか。過酷な経験を経たあとでルリが見せる決意の表情を、どうか見逃さないでほしい。


13歳の少女が主役の新しいロードムービー
アメリカ中西部のネブラスカ州で、アルコール中毒の両親と暮らす13歳の少女ルリ。友だちがいない彼女は、絵を描くことと、テレビの映画鑑賞を、心のより所にしている。ある日、母親と父親が相次いで蒸発してしまい、1人ぼっちになったルリは、ほとんど何の計画もないまま、憧れのラスベガスへと向かう決意をする。田舎道を西へと進む道中、片足が不自由な流れ者の男性エディ(エディ・レッドメイン)や、セクシーだが影のある女性グレンダ(ブレイク・ライヴリー)と出会い、次第にトラブルに巻き込まれていくルリ。じわじわと明らかになっていくエディの本性とは? 過去、グレンダとエディの間に何が起きたのか?

家出少女が探し当てた、自分の人生を切り拓く手段
本作のタイトルである「HICK」とは、「田舎者、うぶな人、カモ」という意味を持つ名詞である。人生経験が浅く、教養も才能も責任感もない家出少女は、狡猾な大人たちにとって、格好のカモとなり得るのだ。いつか誰かが、無償の愛を差し出してくれるという理想を捨てて、自分の足で歩き始めたとき、ルリの本当の旅が始まる。


クロエファンは、絶対に見逃してはいけない作品!
本作の主題歌に起用されたのは、ボブ・ディランの初期作品『スージー(ザ・コフ・ソング)』。軽快なカントリーロックとアメリカ中西部の農村風景が、絶妙にマッチしている。時代設定は、手元の資料にも記載がなく不明だが、全編を通じて携帯電話が登場しないことから、一昔前のアメリカが舞台になっていると推測できる。砂埃が舞う、乾燥した風景のなかで目立つのは、ルリが履いているサンダルと、グレンダが着ているワンピースの鮮やかな赤色だ。それらの赤は、「女性」を強く意識させる。「私って可愛い? 例えば道ですれ違った私を見て、キスしたいと思う? 」と言うルリの口元はなまめかしく、とても13歳の少女には見えない。早熟で魅力的な「女性」と、脆くて不安げな「少女」という2面性を持った主人公ルリを、クロエは巧みに演じている。ファンじゃなくとも、その表情に思わず見入ってしまう瞬間が、多々あることだろう。



▼『HICK ―ルリ13歳の旅』作品・公開情報
2011/アメリカ/95分/カラー
監督:デリック・マルティーニ
出演:クロエ・グレース・モレッツ、エディ・レッドメイン、ブレイク・ライブリー、ジュリエット・ルイス、ロリー・カルキン、アレック・ボールドウィン
配給・宣伝:アニープラネット
提供:アース・スターエンターテイメント
●『HICK ―ルリ13歳の旅』公式サイト
クレジット:(c) 2011 BY HICK PICTURE COMPANY LLC. All Rights Reserved.
※11月24日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー!

文:南天

  • 2012年12月21日更新

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