『ルビー・スパークス』―とびきりロマンティックな“世にも奇妙な物語”

  • 2012年12月21日更新

小説に書いた女の子が、ある日、目の前に現れた! 『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)のジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス監督による6年ぶりの新作は、自分の創作物である女の子と恋に落ちる小説家を主人公にした、ロマンティックでほろ苦い恋物語だ。脚本は、ヒロインのルビー・スパークスを演じたゾーイ・カザン。アネット・ベニングや、アントニオ・バンデラスなど、個性的な俳優陣が扮するキャラクターの、自由な生き方や恋愛哲学に、心打たれる作品である。いま恋の悩みを抱えていたら、この104分間の物語のなかに、解決の糸口が見つかるかもしれない。


自分が思い描いた通りに行動する恋人が、突然現れたら?
デビュー作がベストセラーとなり、天才ともてはやされながらも、その後10年間スランプに陥っている作家、カルヴィン・ウィアフィールズ(ポール・ダノ)。ある日、夢の中で理想の女の子と出会ったカルヴィンは、信頼するセラピストの助言に従って、彼女のことを小説に書き始める。オハイオ州出身、初恋の相手は、ハンフリー・ボガートとジョン・レノン ― そんな女の子、「ルビー・スパークス」について書くことにすっかり夢中になっていたカルヴィンが、ある朝、自宅のキッチンで目撃したのは、彼のために朝食を用意するルビーの姿だった! ついに頭がおかしくなったのかと慌てるカルヴィン。しかし、他のひとにもルビーの姿が見えていると知って、カルヴィンは、嬉しさのあまり彼女を抱き上げて街を駆け回る。ルビーとの恋愛のなかで、生き生きとした感情を取り戻していくカルヴィンだったが、月日が経つにつれて、彼女に対しての情熱が薄れていく。以前とは態度が変わってしまったカルヴィンに対して、ルビーは寂しさを感じ、彼と距離を置こうとする。新しい仲間と交流を深めるルビーの姿に惨めさを覚えたカルヴィンは、再びタイプライターをたたき、ルビーを自分の思う通りに書き換えていくが…。


恋愛3ヵ月目のカップルに観てほしい作品
恋愛を持続させるためには、なにが必要だろうか? 恋愛初期の高揚感がフェードアウトしていく段階で、相手に対してほんの少しのわずらわしさを感じる。それは、誰しも経験したことがある感覚だろう。本作で注目すべきなのは、夫婦である2人の監督と、私生活でも恋人同士である2人の俳優という、2組のカップルが関わっている点である。主人公の2人を実際の恋人同士が演じ、それを監督夫婦が演出することで、「相手のことがとても大切なのに、わずらわしいと感じてしまうもやもや」が、生々しく伝わってくる。その「もやもや」は、カルヴィンのように、自分の思い通りに相手の行動を書き換えることでは、けして晴れない。自分もまた、相手に歩み寄るために、努力しなければならないのである。恋愛初期のカップルには、一緒に観ることをお勧めしたい。この奇想天外な恋物語が、きっと、2人の関係を長続きさせる指標となってくれるに違いないからだ。


女の子が憧れる、ルビー・スパークスというキャラクター
ルビー・スパークスは、女性が憧れるような洒脱さや、溌剌とした輝きをもった、愛すべきキャラクターである。スミレ色のワンピース、明るい黄色のカーディガン、ピンク色のヘルメットなど、彼女の精神性を表すような原色の服の組み合わせは、ルビーを演じたゾーイ・カザンだからこそ似合う色合いだとわかってはいても、思わず真似したくなる。本作の衣装デザイナーは、『リトル・ミス・サンシャイン』でも衣装を担当した、ナンシー・スタイナー。『ヴァージン・スーサイズ』(1999)、『ロスト・イン・トラストレーション』(2003)など、ソフィア・コッポラ監督の作品でも馴染みが深いスタッフである。ルビーが登場してから、カルヴィンの服装や彼の周りの景色も、少しずつ彩りを増していく。物語を追うだけでなく、スタイナーが仕掛けた色調の変化も、ぜひ楽しみたい作品だ。



▼『ルビー・スパークス』作品・公開情報
2012 年/アメリカ映画/カラー/ビスタ/SR・SRD/104 分
監督:ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス
出演:ポール・ダノ、ゾーイ・カザン、アネット・ベニング、アントニオ・バンデラス
配給:20世紀フォックス映画
●『ルビー・スパークス』公式サイト
(C) 2012Twentieth Century Fox
※12月15日(土)よりシネクイント他にて全国順次ロードショー

文:南天

  • 2012年12月21日更新

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