『第4の革命 エネルギー・デモクラシー』-ドイツを脱原発に導いた、2010年で最も観られたドキュメンタリー。

  • 2011年12月21日更新

爆発的な風力発電導入を実現した、ドイツの1990年の電力買い取り法、そして2000年にドイツで制定され、その後太陽光発電の導入の起爆剤となった「再生可能エネルギー法」。これら2つの法律を制定させた中心人物こそ、本作のナビゲーター、政治家で環境活動家でもあるヘルマン・シェーア氏である。この映画はシェーア氏の提案により4年がかりで完成。2010年、ドイツで最も観られ、その後のドイツのエネルギー政策に影響を与えたとされるドキュメンタリー映画である。農業、産業、ITに続く第4の革命「エネルギー・デモクラシー」は起こりうるのか? 世界の実例を紹介しながら、様々な分野からエネルギー問題に取り組む、研究者、事業家、発明者、経済学者などの第一人者達が、エネルギー新時代を語る。


今の日本人の心に必ず響く、環境先進国からのメッセージ。
未だ記憶に新しい、東日本大震災、そして福島第一原発事故・・・直後の関東の計画停電や、その後の福島県の状況を見て誰しもが考えただろう。「本当に原発ってアリなの?」「エネルギーは火力か原子力に頼るしかないの?」ー 無論、日本の世論や国政にも反応は見られたが、世界はもっと過敏に反応していた。その顕著な例がドイツの「脱原発」宣言だ。しかし、実はそれよりも以前から、しかも私達が想像するよりも革新的に、再生可能エネルギーへの取り組みは進められていたのだ。『第4の革命 エネルギー・デモクラシー』は、世界の最新事情や統計を通して、新エネルギーについての可能性を分かりやすく伝えると共に、今こそエネルギー・シフトをしなければならない、という強いメッセージを発している。


驚くべき世界の最新エネルギー事情。観ればあたなももっと知りたくなる。
例えば、デンマークには、住民5万人が全ての電気を風力でまかなう世界最大のエネルギー自治区「フォルケセンター」があるという事実。これが1983年に設立されたというから驚きである。その一方で、バングラデシュやマリ共和国など発展途上にある電力過疎地では、なんとソーラーパネルの普及が進められているという。素人考えだが、インフラもなかなか整わない中で、確かに電線を引くよりシンプルなのかも知れない。エネルギーの自給自足で作られる新たなコミュニティの姿がそこには見える。さらに、蓄電池テクノロジーの開発者や、電気自動車ベンチャーの社長など、様々なスペシャリストの語りが、自然エネルギーで成立する未来の可能性をリアリスティックに感じさせる。エネルギー新時代はもうすぐそこにあるのかもしれないと。


環境だけではない。エネルギー・シフトが世界の市場をも変える。
このドキュメンタリーの発案者でもあるヘルマン・シェーア氏は、もう一つのノーベル賞と知られ、持続可能で公正な地球社会実現のために貢献をした人々に与えられるライト・ライブリフッド賞を受賞している。シェーア氏をはじめ、バングラデシュの貧困に対する取り組みで知られる元グラミン銀行総裁のムハマド・ユヌス氏、国際的な人権活動家であるビアンカ・ジャガー氏など、本作に登場する世界のキーパーソンが考えるべクトルは、決して「環境」だけではない。石油などの枯渇性燃料への依存から解き放たれる事で、燃料の輸出入による国家間のパワーバランスも変わる。またエネルギーが自給自足できるようになれば、発展途上国の貧困や環境の改善にも繋がるという。それほどエネルギー政策というのは、国家や社会にとって重要な問題なのだということを改めて感じさせられた。一方で、本作にも登場するIEA(国際エネルギー機関)からは「(再生可能エネルギーへの100%移行は)あと数十年は無理だ」という意見もある。このような反対意見すらもシェーア氏は「政治はエネルギー産業のいいなり」と言い放ち、バサバサと斬っていくのが小気味良いのだが、果たして真はどこにあるのか。そして日本はー? 少なくとも、私は自然の力を借りて生きるクリーンな未来の社会を信じたい。今後の日本を考える上でも必見の一作、是非ご覧いただきたい。



▼『第4の革命 エネルギー・デモクラシー』作品・公開情報
2011年/83分
監督:カール-A. フェヒナー
出演者:ヘルマン・シェーア/ムハマド・ユヌス/イーロン・マスク/ビアンカ・ジャガー他
製作国:ドイツ、デンマーク、ノルウェー、フランス、スペイン、マリ、バングラデシュ、アメリカ、ブラジル、中国
製作: フェヒナーメディア
配給・宣伝:ユナイテッドピープル
協力:東京ドイツ文化センター greenz.jp
『第4の革命 エネルギー・デモクラシー』公式サイト
※12月17日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次ロードショー。

文:しのぶ

  • 2011年12月21日更新

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