『サラの鍵』-第23回東京国際映画祭最優秀監督賞/観客賞をW受賞した『サラの鍵』、いよいよ公開!

  • 2011年12月16日更新

弟を助けにひた走る少女と真実を求める女性ジャーナリスト。時代を超えてつながる、ふたりの生き様。
平穏な家庭生活の裏側に大きな歴史的秘密が隠されていたとしたら……?
21世紀に生きるひとりの女性ジャーナリスト・ジュリアが追った、60年前のパリで起こったユダヤ人迫害事件に関する真実——それは彼女の人生にも関わることだった。原作は、全世界で300万部を超えるベストセラーとなったフランス人作家タチアナ・ド・ロネの小説。この問題作を、気鋭の監督ジル・パケ=ブレネールが丹念に映画化し、第23回東京国際映画祭では最優秀監督賞と観客賞をW受賞した『サラの鍵』が、2011年の年末いよいよ公開される。ミステリー・ストーリーのように次第に明らかになっていく事実にハラハラしながら物語世界に見いっていくと、やがてこの事件に巻き込まれたユダヤ人少女サラの悲劇的な人生に心を大きくえぐられることになる。目を背けずに真実を突き詰めていくジュリアと、どれだけ傷ついても弟のために家に戻ろうと一心に突き進んでいくサラ。ふたりの真摯な瞳に強く引き付けられる。


1942年と2009年、ふたつの時代を濃密に描いた圧倒的な111分!
2009年、アメリカ出身のジャーナリスト・ジュリアはフランス人と結婚し、パリで夫と娘と暮らしていた。
ある時、雑誌の特集で1942年、フランス警察によるユダヤ人の一斉検挙に事件を担当することになったジュリアは取材を続けていく中で思いがけない真実に向き合うことになる。ジュリアたち夫婦は譲り受けることになっていた夫の祖母マメのアパートに、かつてユダヤ人親子が住んでいたのだ。
時はさかのぼって1942年、ユダヤ人の少女サラは父と母と弟と4人で幸せに暮らしていたが、突如自宅を訪れたフランス警察によって人生が一変してしまう。父母とも引き離されたサラは、検挙された時こっそりクローゼットに隠してきた弟を迎えに行こうと収容先から逃亡を試みた。満身創痍でアパートに戻ったサラが見たものはーー。この出来事をジュリアの夫の家族たちは知っていたのか?ジュリアはひとつひとつ真実を明るみにしていく。2時間に満たない111分の作品にも関わらず、ふたつの時代の物語を過不足なく濃密に描いている。


真実、命、時の流れ……たくさんの問題を突きつけられる。
日本では近年、昭和を生きた人がどんどん亡くなっている。こうして歴史への認識が曖昧になっていくとしても時の流れには逆らえないことなのか、と思いながら、語り継いでいかないといけないとも思う。正しく伝えるためには、何が正しいのかをきちんと知らないといけないとも。
『サラの鍵』では、フランスであったユダヤ人迫害についての真実を女性ジャーナリストが徹底的に追求していく。たとえその真実が、彼女とその家族や、取材をした人たちにとって、知りたくなかったことであってもだ。こうして過去の話を再現するだけでなく、現代を生きる人間の物語にすることで、他人事ではないと思わされるし、ふたつの時代の交錯の仕方がとても緻密。構成力の高さに作家の才能を感じる。ジル・パケ=ブレネール監督は、過去と現在で、撮影の仕方を変えるなど工夫をこらす。さらに、秀逸と思ったのは、ユダヤの少女サラをいわゆる“被害者”にしていないこと。追いつめられたサラの判断や行動が時に他者の運命も変えてしまうのだ。ジャーナリスト・ジュリアも真実を明らかにすることによって、他者の平穏な記憶を変えてしまう。授かった命についての夫との認識の違いのエピソードにも、いつの時代もどんな状況でも変わらず、他人の尊厳を人は知ってか知らずか侵してしまうことがある、ということを突きつけられて、痛い。


歴史の真実を追う勇敢なヒロインの、女性としての生き方にも注目!
史実に基づいた社会派な物語ではあるけれど、現代パートのヒロイン・ジャーナリストのジュリアの境遇は普通の女性も大いに共感できるもの。例えば、ジュリアは45歳で妊娠したものの今から父親になるには荷が重いと出産を反対する夫とお腹の子供との間で惑う。これってアラフォー女性には興味深い問題なのだ。
また、ジュリアのワーキングファッションもシンプルながら洒落ている。紺のコートの着こなしなんてとてもステキ。真面目な思考を促す映画でオシャレに思いを馳せるなんて……と気が引けながらもついつい見とれてしまうのです。

▼『サラの鍵』作品・上映情報
監督:ジル・パケ=ブレネール
脚本:セルジュ・ジョンクール&ジル・パケ゠ブレネール
原作:タチアナ・ド・ロネ
撮影:パスカル・リダオ
音楽:マックス・リヒター
出演: クリスティン・スコット・トーマス、メリュジーヌ・マヤンヌ、エイダン・クイン他
配給:ギャガ
上映時間:111分
『サラの鍵』公式サイト
12月17日 銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館他全国順次ロードショー
© 2010 – Hugo Productions – Studio 37 – TF1 Droits Audiovisuel – France2 Cinéma

文:木俣冬

  • 2011年12月16日更新

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