第三回下北沢映画祭コンペティション授賞式-人形アニメーションのホラー作品をグランプリに選出

  • 2011年12月05日更新

2011年11月27日(日)、第三回下北沢映画祭コンペティション部門の出品作品上映、審査結果発表、及び授賞式が行われました。上映されたのは、250を超える応募作から選ばれた9作品です。上映後、黒沢清監督はじめ4名の審査員の厳正な審査によりグランプリ、準グランプリが選出されたほか、観客投票による観客賞も決定。各受賞作品監督による上映の合間に行われた挨拶と、受賞後の喜びの声を紹介します。

第三回下北沢映画祭受賞作
グランプリ 秦俊子監督『さまよう心臓』
準グランプリ、観客賞 原田裕司監督『壁女』
準グランプリ ひらのりょう監督『ホリデイ』



◇グランプリ 秦俊子監督『さまよう心臓』(人形アニメーション)
この作品はコマ撮りの人形アニメーションです。「人形って怖いな」というところから始めて、ホラー作品を作っていきました。作品にはコマ撮りと実写の両方が入っています。
受賞コメント:いろいろな映画祭に出品しましたが、最終ノミネートまでは行ってもなかなか賞がとれず、ちょっとネガティブになっていました。でもこの映画祭で認めて頂いて、めちゃくちゃ嬉しいです。また、今日こんなに大勢の方に観て頂けたことも嬉しかったです。
『さまよう心臓』秦俊子監督 上映時間9分52秒
廃墟で遊ぶ2人の高校生。奥の部屋から物音が聞こえ、1人が暗い部屋へと入っていく。そこには得体の知れない何かが潜んでおり、2人の高校生は心臓を奪われてしまう。その廃墟に立ち寄った幼い少年と妹は…。



◇準グランプリ、観客賞 原田裕司監督 『壁女』(実写)
主役を演じた仁後亜由美さんは壁女のキャラクターそのままで、実際の部屋のシーンも彼女の部屋で撮影しました。普段から面白い魅力のある人なのですが、撮影前に台本をあて書きしたと彼女に伝えたら、「私は上司に切れたりしない」とすごく怒られました。夜中の3時まで喧嘩して、仲直りして出来たのが『壁女』です。
受賞コメント:今日来て観てくださったお客さんが選んでくれた観客賞と準グランプリを受賞できてとても嬉しいです。
『壁女』原田裕司監督 上映時間16分30秒
与田仁美26歳、独身。趣味は壁に張り付く事。ゴミだらけの部屋に住み、職場では上司に怒られ、何とも冴えない日々を送っている。そんな与田が職場に来る配送屋の男性に恋をする。恋愛下手の与田が繰り広げる恋の物語。



◇準グランプリ ひらのりょう監督 『ホリデイ』(アニメーション)
大学の卒業制作の作品としてこのアニメーションを作りました。去年の夏に作り始めたのですが、当時『BECK』という映画をやっていたので、バンドの青春を描いた作品として作りました(笑)(注:監督のジョーク。本作はシュールな世界観が炸裂した不思議なお話です)。このでかい画面で皆さんに見て頂けたので嬉しかったです。
受賞コメント:先ほど上映を見て、自分でも「わけのわからないアニメーションだな」と思いました。賞を頂けてすごく嬉しいです。また新しい脚本を作り上げてがんばっていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。
『ホリデイ』 ひらのりょう監督 上映時間15分
登場人物である男とイモリは女の子のために無我夢中です。彼女が何故消えたかも理解できないまま自分なりに彼女を救おうと努力します。僕の人生のあらゆる出来事はごちゃ混ぜになってこの物語に登場します。そして、幸せになるためになにが幸せかも分からず走り続けています。バカンスはいつも雨、思う通りにはいかない。のです。



講評
轟夕起夫氏(映画評論家):やはり4人だと意見が分かれますね。『さまよう心臓』は、“スタンダードだけどなかなかこういう映画はできないな”ということで、グランプリとして意見がまとまりました。

大槻貴宏氏(トリウッド代表):この映画祭のコンペティションの特徴は、実写とアニメーションが同じ土俵で戦っていることで、これには我々も正直困っているんです(笑)。『ホリデイ』はちょっと長いかなとも感じましたが、あの世界観が好きでした。アニメーションであのような世界観を作ったというところを評価しています。『さまよう心臓』について、アニメーションでホラーをやるというのはすごく挑戦的な試みだと思います。それがきちんと結果として出ていました。

直井卓俊氏(映画プロデューサー):『壁女』は脇も含めて非常にキャラクターが立っていたなと思います。主演の新後さんに対して監督はすごく愛を持っているなと思い、最後まで楽しく観られました。短編なので物足りなさはあるかもしれませんが、非常に楽しめました。『さまよう心臓』について、あまりアニメーションは見ないのですが、完成度が高かった。『ホリデイ』は『BECK』みたいな青春映画を撮りたかったそうですが(笑)、単純にもう1回見たいなと思いました。また、この作品は結構狂えているんじゃないかなと感じました。アニメでしかできない表現が良かったです

黒沢清氏(映画監督)
強烈な主役の彼女をもっと長い時間見たかった
『壁女』は、主演も含めてキャラクターが全員はっきりしていて観やすかったですね。結構笑いました。彼女がドタドタ走るシーンでは「あっ、この人走るんだ」と感動したし、細かな描写もしっかりしていました。ただ、16分というのは短かったですね。「えっもう終わるの?」って。やはりあのキャラクターであのように出てきたのだから、30分、もしくは90分ぐらいでも十分もつんじゃないかとも思いました。あの強烈な彼女が、16分ぐらいで適当に祝福されて終わったという感じがいかにも残念、もっと世の中を破壊する力があったんじゃないかと、惜しまれてなりません。
懐かしい怪奇映画のテイストを持つ『さまよう心臓』
黒沢氏:僕はアニメーションには詳しくないのですが、『さまよう心臓』の非常にオーソドックスなホラータッチが好きでした。特に、最後に恐ろしい人形が本当に燃えて、人形の首がポロッと落ちるところで、「あっ、やられた」と思いましたね。「これはいい」と。僕の好みもありますが、ホラーといっても昔懐かしい怪奇映画のタッチで、アニメとはいえ10分にも満たない長さの作品の中で、これほどオーソドックスな、ある種古典的なニュアンスをよく出してくれたと思います。アニメの良し悪しというのはあまりよくわかりませんが、この作品が自分の趣味的に大好きで、僕が強く推して1位になったということもあり、とても楽しめました。


「実写とアニメーションを一緒に審査するのは難しい」と話す審査員の方もいましたが、観客は多彩な作品を一度に観られて充実した時間を過ごせたのではないでしょうか。独創的で新鮮な短編映画を集めたコンペティション部門。今年見逃した方はぜひ来年!

文・編集:吉永くま



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