『大津波のあとに』『槌音』- ふたりの監督が見つめた、震災。見逃せない、一週間の限定ロードショー。

  • 2011年11月16日更新

「山形国際ドキュメンタリー映画祭」で上映され注目を集めた『大津波のあとに』(森元修一監督)と『槌音』(大久保愉伊監督)。
東日本大震災で被災した土地を撮ったドキュメンタリーが渋谷UPLINK Xで同時上映される。東京都民の森元監督が、3月23日から約10日間、仙台で取材した『大津波のあとに』と、被災した岩手県大槌町出身の大久保監督が震災前と後の映像を重ね合わせて作った『槌音』。視点の違う作品が並ぶことで、東日本大震災を多角的に受け止めることができる。
3月11日から8ヶ月が経過し、2011年が終わりに近づいている中で、このドキュメンタリーを見て、今一度、あの出来事を胸に刻み付けたい。


『大津波のあとに』『槌音』、どちらも生々しい傷跡を映し出し、とても多くの感情と思考を呼び起こす。『大津波のあとに』を監督した森元修一監督は、3月23日からガソリンがなくなるまで約10日の間、カメラをもって仙台、東松島、石巻をめぐった。津波によって変わり果てた風景を映し、被害に遭いながらもそこに残り生活を続ける人たちに話を聞く。
『槌音』の大久保愉伊監督は、故郷・大槌町が津波と火事の被害に遭った。その2週間後に帰郷し街の様子を撮影。その映像と、かつて撮っていた津波に遭う前の故郷の様子を交互につなげ故郷の変容を描き出している。
当事者ではない者も被災地の様子をこの眼で見なくてはいけない、と多くの人が口にする。ジャーナリストや物を作る人は率先して出かけ、一般人もすすんでボランティアに参加している。その一方で、気になりながら、未だ現地に行くことができてない者もまだまだいる。そんな時、『大津波のあとに』『槌音』を見ることで、テレビの報道などではわからなかった、かの地の様子を知ることができる。


故郷を破壊され、家族を仲間を亡くした人たちの言葉と表情は……
 誤解をおそれずに書けば、真実と作り物との違いを痛感する。『大津波のあとに』で映された津波で破壊された宮城県の沿岸や街の様子は、どんなに作りこんだ映画でも再現できないだろう。一瞬のうちに、こんなにも広大な土地を、まるで長い時間をかけて化した廃墟のような状態にしてしまう津波の脅威は想像を絶していた。ナレーションも音楽もないが、ごうごうと吹く風の音、足場の悪い場所を歩く足音などが痛切に胸に響く。
 そして、住人たちへのインタビュー。監督と被写体との距離感は極めてデリケート。グイグイと踏み込まないし、かといって決して目を逸らさない。画面に映し出された、故郷を破壊され、家族を仲間を亡くした人たちの言葉と表情は……。
 卒業式に出席した子供たちの表情にも被害の巨大さを思い、監督が学校の鏡ごしに映したある表情も、この未曾有の体験をした者にしかわからないであろう複雑な感情に満ちている。
 荒廃した土地に立つ人たちの顔、顔、顔……我々観客はその表情に何を思うだろうか。


かけがえのない日常の風景とそれがなくなってしまった風景。
『槌音』(つちおと)というのは、大久保愉伊監督の故郷である岩手県大槌町からつけられたタイトル。
 監督の故郷は震災による津波と火事で大きなダメージを被った。災害が起こってから2週間後、監督は故郷に戻り、カメラを回した。
多くの作家やジャーナリストが震災後の大きく変容してしまった土地の様子を映画にするが、『槌音』は、震災前の様子も見ることができる。監督が過去に撮って東京に持ってきていた映像が使用されている。
平和な街並、実家の団らん、祭りの盛り上がりなど……刺激はないけれど笑顔にあふれたかけがえのない日常の風景の数々。そしてそれがポッカリなくなってしまった風景と対比されていく。
ふと、監督がカメラを持って動くスピードが『大津波のあとに』よりも速い気がした。息づかいも。それは、記録者と当事者の違いなのかもしれない。もしかしたら世代の違いかもしれない。大久保監督は86年生まれで、森元監督は70年生まれである。老人も子供も男性も女性も、当事者もそれ以外の人も、人の数だけ震災への思いがある。そして、東日本大震災は日本のみんなの問題だ。
ちなみに、試写に行った時、試写会場が予定時間になっても開かないというアクシデントがあった。森元監督が、来た人全員に会場が開くまでとなりの店でコーヒーをごちそうしてくれた。だから作品を褒めるわけでは決してない。咄嗟にそういう行動をとるということと、被災地での居方は関係していると思うのだ。予期せぬ出来事にどう対処するのか、それは誰しもに問われることである。なお、大久保監督は今もなお折りにつけ故郷の様子を撮り続けている。
 
※写真はすべて『大津波のあとに』より。


▼『大津波のあとに』『槌音』作品・上映情報
『大津波のあとに』 監督:森元修一 日本/2011/日本語/73分

『槌音』 監督:大久保愉伊 日本/2011/日本語/23分

『大津波のあとに』『槌音』公式サイト
※ 渋谷・UPLINK Xにてロードショー
11月19日(土)〜12月2日(金)
上映延長されました。
上映スケジュールは公式サイトをご覧ください。

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文:木俣冬

  • 2011年11月16日更新

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