『緑子/MIDORI-KO』—夢の食物を巡り、人間の欲望丸出しで繰り広げられる摩訶不思議な争奪戦を繊細な鉛筆画で描く、黒坂圭太ワールドの真骨頂。

  • 2011年10月11日更新

国内外で高い評価とカルト的な人気を誇り、ヤン・シュヴァンクマイエル氏も絶賛するアート・アニメーション作家、黒坂圭太監督の初長編作品となる『緑子/MIDORI-KO』がいよいよ公開となる。「変形作品」シリーズや、ビジュアル系バンドDIR EN GREYの「Agitated Screams of Maggots」のプロモーションビデオなど、短編作品を中心に手掛けてきた黒坂氏が、構想から含めて実に13年の時を費やし、30,000枚にも及ぶ手書きドローイングで、ほぼ一人で作り上げたというこの作品は、幻想的でありながらも人間の欲望をグロテスクに描き、観る者を摩訶不思議な世界へと誘う。

夢の食べ物MIDORI-KOを巡る、欲望丸出しの人間達の争奪戦。

時は近未来、20××年、東京23区内某所。廃虚と化した商店街の片隅で、5人の科学者たちが将来訪れるであろう食料危機のために「夢の食物」の開発を続けていた。ヘチマと人間を交配し、肉と野菜を兼ね備えたまったく新しい食料になるはずだったが、研究は頓挫してしまう。ある夜、1万年に1度だけ地上を照らす「マンテーニャの星」が出現し、そのパワーによって夢の食物「MIDORI-KO」が誕生するのだが、喰われることを恐れ逃げ出したMIDORI-KOは、同じ町内のアパートに住む大学農学部研究生のミドリちゃんのもとへ逃げ込む。血まなこになって捜しまわる科学者たち。食欲旺盛なアパートの住人たちも隙あらばMIDORI-KOを喰おうと狙い、人間達の食欲むき出しの果てしない争奪戦が始まる。

緻密な鉛筆画による独特の映像美と個性的な音楽。驚愕の黒坂ワールドに飲み込まれる!

画狂、黒坂圭太氏が10年以上をかけて描いたという30,000枚の鉛筆画が作り出すシュールな映像は、グロテスクでいて美しく、グニョグニョとした奇々怪々の触感まで伝わってきそうでありながらも、手描きのアナログ感溢れる不思議な心地良さに包まれる。圧倒的な画力と黒を基調とした繊細な色彩、スクリーンの隅々までを覆い尽くす独特の世界観。それらを彩る坂本弘道らの狂おしくも切ない音楽がまた素晴らしい。劇中に流れる「マンテーニャの星」のテーマソングは黒坂監督自身による作詞作曲だそうだ。他の追随を許さない黒坂ワールドに「何だ、こりゃ!」と驚愕しながらも、どっぷりと飲み込まれて行く快感を是非とも味わってほしい。

恐ろしくも可笑しいキャラクター達が繰り広げる、究極のカーニバル・エンターテイメント。

この作品には、「食べてしまいたい」ほど可愛い人面植物MIDORI-KOをはじめ、野菜と融合された女子高生たち、魚頭、目玉男など、強烈な風貌のキャラクターがわんさか登場する。見た目には恐ろしいが、絶妙なユーモアによってデフォルメされた人間臭さが、皆どこか憎めない。そのキャラクター達がMIDORI-KOを巡って食欲を剥き出しにしていく様子は恐ろしくも実に滑稽だ。唯一の美少女キャラ(?)みどりちゃんのラストの豹変ぶりも見ものである。人間の根源的な欲を直球で描き、怪奇とロマンが交錯する究極のカーニバル・エンターテイメント。ああ、私もMIDORI-KOが食べたい……。

▼『緑子/MIDORI-KO』作品・公開情報
2010年/日本/55分
監督・脚本・絵コンテ・キャラクターデザイン・美術・作画・原画・動画・背景・色彩設計・撮影・編集:黒坂圭太
プロデューサー:水由 章(ミストラルジャパン)
音楽:坂本弘道
エンディングテーマ:「麒麟児の世界」作詞・作曲・歌 未映子
声の出演:涼木さやか、ゆうき梨菜、チカパン、三島美和子、あまね飛鳥、木村ふみひで、河合博行、山本満太
製作:株式会社ミストラルジャパン
コピーライト:(C)Keita Kurosaka/Mistral japan
『緑子/MIDORI-KO』公式サイト
※9/24(土)より渋谷 アップリンクXにてロードショー

文:min


  • 2011年10月11日更新

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