第12回 東京フィルメックス ラインアップ発表会見―今年のフィルメックスの予習は、これで完璧!~特別招待作品編

  • 2011年10月05日更新
2011年11月19日(土)~27日(日)に、東京の有楽町朝日ホールをメイン会場に開催される、第12回 東京フィルメックス。9月15日(木)に映画美学校にておこなわれた記者会見をもとに、この映画祭の徹底予習として、「コンペティション編」「特別招待作品編」「特集上映編」と、3記事に渡ってラインアップをご紹介しています。

第2弾の今回は、「特別招待作品編」。名匠のメガフォンによる最新の9本が上映されます。とびきりの作品の数々を、市山尚三プログラム・ディレクター(左の写真)の解説を引用させていただきながら、ご紹介致します。

《特別招待作品》―注目度と実力ともに満点の映画作家による、1本たりとも見逃せない9作品。

オープニング作品
『アリラン』
Arirang / Arirang

韓国/2011年/100分
監督・出演:キム・ギドク
配給:クレストインターナショナル

「ドキュメンタリーでありながら、完全なエンターテインメント」

市山尚三プログラム・ディレクター(以下、市山) キム監督が近頃の心情とひとり暮らしの様子を語って撮る、セルフ・ドキュメンタリー。出演者は監督ひとりだけなので、とても地味なドキュメンタリーと思われるかもしれないが、完全なエンターテインメントにしあがっている。たとえば、監督がひとりで三役をしたり、途中からアクション映画になったりする。ひとりで撮影してこれほどおもしろいものが作れるのか、と驚かされる。一方、描かれている内容は真剣で、監督が映画制作にどのように向きあっているのかが、痛いほど伝わってくる。2011年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で最優秀作品賞を受賞。

クロージング作品
『奪命金』
Life Without Principle

香港・中国/2011年/107分
監督:ジョニー・トー
出演:ラウ・チンワン リッチー・レン デニス・ホー 他

「単なる娯楽映画ではない」

市山 エンターテインメント大作を撮る一方で、3年に一度くらいのペースで趣味的な作品を撮るトー監督。本作もその種の作品。主な登場人物は、銀行員、チンピラ、刑事の3人で、ひとつの事件をきっかけに彼らの運命が大きく変わる展開は、『パルプ・フィクション』を連想させる。娯楽に徹したスピーディーな作品でありながら、ITバブルや金融危機を引き金に人々の心が荒んでいく現代社会の指標ともなっていて、「単なる娯楽映画ではない」と唸らせる。2011年のヴェネチア国際映画祭、コンペティション部門での上映がワールド・プレミア。

『ニーチェの馬』
The Turin Horse / A torinói ló

ハンガリー・フランス・スイス・ドイツ/2011年/146分
監督:タル・ベーラ
撮影:フレッド・ケレメン
配給:ビターズ・エンド

「タル・ベーラ監督の、最後の作品」

市山 ニーチェの逸話が題材。長回しの技法を使ったモノクロームの作品で、そのスタイルが極まっている。今、世界で観られている映画の中で、あるひとつの頂点に達している、瞠目の作品。2011年のベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞。タル監督の最後の作品でもある。

『これは映画ではない』
This is not a film / In Film Nist

イラン/2011年/75分
監督:ジャファール・パナヒ モジタバ・ ミルタマスブ

「映画制作を禁じられた状況でも、『私は映画を作る』というジャファール・パナヒ監督の決意が伝わってくる」

市山 2010年3月、「イラン政府に反対する作品を準備している」という容疑で、警察に逮捕されたパナヒ監督。釈放されたあとも、「映画の撮影・国外へ出ること・マスコミの取材を受けること」等が禁止されている。映画を撮ってはいけないはずの監督の新作が、2011年のカンヌ国際映画祭で上映されたから、誰もが驚いた。それが本作である。『これは映画ではない』というタイトルは、映画制作を禁じられているからだろうと思われる。
自宅にいるパナヒ監督に、共同監督のミルタマスブ監督がインタビューをしているシーンから始まるドキュメンタリー。しかし、撮影の途中で、ミルタマスブ監督は用事を思いだして帰ってしまう。その後、パナヒ監督は自らカメラをまわし始めるが、来客があったり、犬やイグアナといった動物が活躍したりする。ドキュメンタリーにもかかわらず、知的で劇映画的なしかけが含まれているのだ。
厳しい状況にあっても、「それでも私は映画を作るのだ」というパナヒ監督の決意が伝わってきて、感動をそそられる。しかし、単に深刻な作品を撮るのではなく、ユーモアのセンスもちりばめられており、パナヒ監督の素晴らしさが伝わってくる。

『モンスターズクラブ』
Monsters Club

日本/2011年/72分
監督:豊田利晃
配給:ファントムフィルム
製作:ギークピクチュアズ/ヌーヴェル
制作:ギークサイト
出演:瑛太 ピュ~ぴる 他

「瑛太さんの演技が素晴らしい」

市山 企業やテレビ局に爆弾を送り続ける男の物語。72分というコンパクトな上映時間の中に、あらゆる要素が凝縮されている。限られた状況の中で、現代がどういう社会であるか、それをどうやって打ち破っていくかを描いているのが、本作の重い点だ。ある種の爆弾犯人という難しい役柄を演じる瑛太さんの素晴らしい演技も見どころのひとつ。話題のアーティスト、ピュ~ぴるさんが出演しているのも注目。

『CUT』
Cut

日本/2011年/132分
監督・脚本:アミール・ナデリ
共同脚本:青山真治 他
配給:ビターズ・エンド
出演:西島秀俊 常盤貴子 菅田俊 でんでん 笹野高史 他

「どんな状況で撮っても、自分のカラーが色濃く表出されるのが、アミール・ナデリ監督の稀有な才能」

市山 今年のコンペティションで審査委員長を務めるナデリ監督の最新作。借金を返すために殴られ屋となる映画監督の物語。主人公を演じる西島さんとナデリ監督は、東京フィルメックスで出会って意気投合。本作の脚本は、西島さんのために書かれたともいえる。
ナデリ監督はイランの出身で、現在はアメリカで活躍している。しかし、本作の台詞はすべて日本語で、撮影も日本でおこなわれた。完全な日本映画だが、普通の日本映画とは異なり、だからといってイラン映画やアメリカ映画でもなく、「アミール・ナデリの映画」にしかなっていない。あらゆる制約の中、どこで撮影をしても、自分のカラーが色濃く表出される。これがナデリ監督の稀有な才能である。2011年のヴェネチア国際映画祭、オリゾンティ部門でオープニングを飾った。

『RIVER』
RIVER

日本/2011年/89分
監督:廣木隆一
配給:ギャンビット トラヴィス
コピーライト:(C)2011 ギャンビット
出演:蓮佛美沙子 他

「東日本大震災以降、『なにを撮るべきか』と多くの映画監督が考えている。そういった映画に位置づけられる最初の作品」

市山 劇中ではっきりと言及されているわけではないが、秋葉原無差別殺傷事件がモチーフになっていると思われる作品。事件で恋人を失ったヒロインを、蓮佛さんが演じている。
東日本大震災が起こってから、「自分たちは、なにを撮るべきか」と日本の多くの映画監督が考えているが、本作はそういった映画に位置づけられる最初の作品であると思われる。

『我が道を語る』
Yulu / Yulu

中国 / 2011 / 88分
監督:ジャ・ジャンクー タン・チュイムイ チェン・タオ チェン・ジーホン ソン・ファン ワン・ツーチャオ ウェイ・ティエ

ジャ監督と6人の若手監督たちによる、オムニバス・ドキュメンタリー。中国の実業家、活動家、昆劇俳優等にインタビューをして、現代中国の様相を伝えている。
※記者会見のあとに上映決定と発表されたため、会見での市山さんの解説はありません。

『KOTOKO』
KOTOKO / KOTOKO

日本/2011年/91分
監督・製作・脚本・撮影・編集:塚本晋也
配給:マコトヤ
原案・出演:Cocco

現実と虚構のあいだでバランスをとれずに葛藤し続ける女の姿を描いた作品。シンガーソングライターのCoccoさんが原案で、彼女が主演している。2011年のヴェネチア国際映画祭、オリゾンティ部門で、最高賞のオリゾンティ賞を受賞。
※記者会見のあとに上映決定と発表されたため、会見での市山さんの解説はありません。

▼第12回 東京フィルメックス
期間 2011年11月19日(土)~27日(日)
会場 有楽町朝日ホール 他
主催 特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会
「第12回 東京フィルメックス」公式サイト
※上映スケジュール等、詳細は上記の公式サイトをご参照ください。

取材・編集・文:香ん乃 記者会見スチール撮影:荒木理臣

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映画の達人-映画プロデューサー市山尚三さん


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