第12回 東京フィルメックス ラインアップ発表会見―今年のフィルメックスの予習は、これで完璧!~コンペティション編

  • 2011年10月04日更新

注目の映画祭が毎週のように開催される秋は、四季の中で映画ファンが最も忙しい季節です。そんな中、11月に催される映画祭の大本命といえば、東京フィルメックス。第12回を迎える2011年は、11月19日(土)~27日(日)、東京の有楽町朝日ホールをメイン会場に開催されます。

注目のラインアップが、9月15日(木)の記者会見で発表されました。映画美学校にておこなわれた会見に登壇したのは、林加奈子東京フィルメックスディレクターと市山尚三プログラム・ディレクター。また、ゲストとして、審査員を務める篠崎誠監督と、コンペティションで『無人地帯』が上映される藤原敏史監督が駆けつけました。↑の写真、左から、林さん、藤原監督、篠崎監督、市山さんです。

林さんと市山さんといえば、たぐいまれなる「映画の目利き」。おふたりの解説を引用させていただきながら、「コンペティション編」、「特別招待作品編」「特集上映編」と、3記事に渡って、今年のラインアップをご紹介致します。まずは「コンペティション編」をお届け。さあ、第12回 東京フィルメックスに備えて、徹底的に予習をしましょう。

《東京フィルメックス・コンペティション》―アジアの新鋭たちがメガフォンを執った、選りすぐりの10作品。

『フライング・フィッシュ』
Flying Fish / Igillena Maluwo

スリランカ/2011年/124分
監督:サンジーワ・プシュパクマーラ

林加奈子東京フィルメックスディレクター(以下、林) 民族対立による内戦の時代に生きた人々を描く本作は、プシュパクマーラ監督のデビュー作。「このテーマを描いて、ここで決着をつけなければ、自分は先に進めない」という監督のこだわりが伝わってくる。映像美にも注目。

『オールド・ドッグ』
Old Dog / Khyi Rgan

中国/2011年/88分
監督:ペマツェダン

 チベット人のペマツェダン監督の第3作。犬を飼っている老人の物語だが、「(単なる)犬の話か」と思って観ると、足をすくわれる。チベットの誇り高い威厳が感じられる作品。

『ミスター・ツリー』
Mr.Tree / Hello! 樹先生

中国/2011年/88分
監督:ハン・ジェ
出演:ワン・バオチァン 他

 ジャ・ジャンクー監督の助監督を務めたハン監督の第2作。本作のプロデューサーはジャ監督。2011年の上海国際映画祭で、監督賞・審査員特別賞等、3冠に輝いている。

『独り者の山』
Bachelor Mountain

中国/2011年/100分
監督:ユー・グァンイー

 黒龍江省に生きる人々をとらえたドキュメンタリー。「ドキュメンタリーで感情を描きだそう」と果敢に挑戦している作品。ユー監督はいずれ劇映画を撮るのでは、と感じさせる。

『ムサン日記~白い犬』
The Journals of Musan / Musanilgi

韓国/2010年/127分
監督:パク・ジョンボム
配給:スターサンズ

 イ・チャンドン監督の助監督を務めたパク監督のデビュー作。パク監督自ら脱北者の主人公を演じている。韓国に移ってからの脱北者に待ち受ける過酷な日々が、恋愛模様等も含めて、繊細に描かれている。観る際に瞬きをするのがもったいない作品。

『豊山犬』
Poongsan

韓国/2011年/121分
監督:チョン・ジェホン
脚本:キム・ギドグ
出演:ユン・ゲサン 他

 キム・ギドク監督の助監督を務めたチョン監督の第2作。緊迫感と感情をとがった刃物で抽出しているような作品。今後、チョン監督は商業的大作にアートの匂いを添えて活躍するだろうと予感させてくれる。

『カウントダウン』
Countdown

韓国/2011年/120分
監督:ホ・ジョンホ
出演:チョン・ジェヨン チョン・ドヨン 他

 ホ監督のデビュー作ながら、多額の予算と有名俳優を使って作られていることに、韓国映画界がこの監督に寄せる期待が窺える。ソウルやプサンといった街の切りとりかた、カー・チェイス等、見せ場を盛りあげる濃い演出に見応えがある。香港のアクション映画を髣髴とさせながらも、韓国映画ならではのスタミナと粘り強さを味わえる。

『東京プレイボーイクラブ』
Tokyo Playboy Club

日本/2011年/96分
監督:奥田庸介
配給:スタイルジャム
コピーライト:(C)2011 東京プレイボーイクラブ
出演:大森南朋 光石研 臼田あさ美 他

 かわいい男の子がたくさん出てきそうなタイトルでありながら、いざ観ると全然違うという驚きが気持ちよい。うらぶれた街を舞台に、そこに地に足をつけて生きる人と流れ者のバランス、心憎いユーモアのセンスが素晴らしく、奥田監督のたぐいまれなる才能を感じる。弱冠24歳の奥田監督は、映画のつぼとテンポを心得ている。

『無人地帯』
No Man’s Zone

日本・フランス/2011年/100分(予定)
監督:藤原敏史

 東日本大震災による原発事故後の福島にて撮影したドキュメンタリー。福島の現状を伝えているだけでなく、それに直面して驚き迷っている藤原監督自身の立ち位置が見えてくる。本作で完結するのではなく、福島や日本に向きあい続けていかなければならないと示す、記録ではなく「現在」そのものの作品。今回がワールド・プレミアだが、今後、本作は海外の至るところで観られていかなくてはならない。

『グッドバイ』
Good Bye / Bé omid é didar

イラン/2011年/100分
監督:モハマド・ラスーロフ

テヘランを舞台に、海外への出国を望む女性弁護士が直面する困難を描いた物語。2011年のカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で監督賞を受賞。ラスーロフ監督は、2010年の3月、ジャファール・パナヒ監督とともに、政府に一時拘束された。
※記者会見のあとに上映決定と発表されたため、会見での林さんの解説はありません。

《国際審査員》―コンペティションの最優秀作品賞と審査員特別賞を決めるのは、この5名。

■アミール・ナデリさん(審査委員長)
イラン出身の、アメリカの映画監督。今年のフィルメックスでは、西島秀俊さん主演の最新作『CUT』が特別招待作品にて上映される。
「未来の重要な映画作家の多くは、東京フィルメックスから出てくると信じている。間違いない。カット!」
(ナデリさん)

■フィリップ・アズーリさん
フランスはパリ在住の映画批評家。『リベラシオン』、『Les Inrockuptibles』、『カイエ・デュ・シネマ』、『Trafic』、『ヴォーグ』等に寄稿している。

■チョン・スワンさん
チョンジュ国際映画祭の前プログラム・ディレクター。國東大学校映像大学院の助教授。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で審査員を務めたこともある。日本語が非常に堪能。

■篠崎誠さん
日本の映画監督。立教大学現代心理学部映像身体学科教授。映画美学校講師。 第1回 東京フィルメックスのコンペティションで『忘れられぬ人々』(2000)が上映。代表作は、『東京島』(2010)、『死ね!死ね!シネマ』(2011)等、多数。

■スーザン・レイさん
アメリカの映画監督。ニコラス・レイ監督の妻で、ニコラス・レイ財団代表。今年のフィルメックスでは、監督作『あまり期待するな』が、特集上映「ニコラス・レイ生誕百年記念上映」 にて上映される。

《記者会見のゲストより挨拶》―篠崎誠監督・藤原敏史監督

■篠崎誠監督(審査員)
第1回 東京フィルメックスでは、自分にとってとても大切な『忘れられぬ人々』という作品をコンペティションに選出していただきました。それからひとまわりの年月が経って審査員を務めさせていただくことになり、非常に光栄です。
毎年、フィルメックスのコンペティションにはとてもおもしろい作品がたくさんあるので、「ぜひ観たい」と欲望が勝って、審査員を引き受けさせていただきました。

■藤原敏史監督(コンペティション『無人地帯』監督)
2011年3月11日に地震があり、その翌日、現在も進行中の大変な事故が福島第一原発で起こりました。私は従来より原発反対のスタンスですが、最初は自分がこういう作品を撮るとは思っていませんでした。しかし、福島の現状を伝えないのはまずいのではないかと考えて、「福島第一原発の20km圏内に行ってみよう」と、4月20日から撮影を始めたのが『無人地帯』です。
「4月22日の午前零時をもって警戒区域」と、政府が突然発表した結果、この圏内での撮影は基本的にできなくなっています。しかし、撮影よりも重要なのは、地元のかたがたがこの区域にはいれなくなったことです。4月22日までは、避難されていたかたがたの中にも、家畜やペットの世話、自宅の様子を見るといった理由で、定期的にこの区域にはいっていたかたが多くいらっしゃいました。しかし、そういったかたがたが、この区域に一切はいれなくなった結果、たとえば家畜を安楽死させるといった政策や流れが起こってしまいました。これらのことを考えると、(4月22日の前に)撮影をした意義がある、という作品になっています。
また、同じく4月22日に、福島の原発から北西約40kmに位置する飯館村が、計画的避難区域として政府に指定されました。私は5月の末に飯館村を訪れて、これから自宅をあとにしようとなさっているかたがたにお話を伺うことができました。今、日本では、できる限り早くこういう作品を作ることが非常に重要だと思っています。

▼第12回 東京フィルメックス
期間 2011年11月19日(土)~27日(日)
会場 有楽町朝日ホール 他
主催 特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会
「第12回 東京フィルメックス」公式サイト
※上映スケジュール等、詳細は上記の公式サイトをご参照ください。

取材・編集・文:香ん乃 記者会見スチール撮影:荒木理臣

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