『サヴァイヴィング ライフ -夢は第二の人生-』初日舞台挨拶―チェコアニメの巨匠、 ヤン・シュヴァンクマイエル監督が、創作の源について語る。

  • 2011年09月08日更新

夢の中で会った女性を忘れられなくなった中年男が夢と現実の二重生活を送る姿を描いた幻想的ラブ・サスペンス『サヴァイヴィング ライフ -夢は第二の人生-』。独特の”切り絵アニメーション”で、デジタル作品を凌駕する映像世界を魅せる。2011年8月27日(土)、渋谷シアター・イメージフォーラムにて公開初日舞台挨拶が行われ、アートアニメーションの巨匠、ヤン・シュヴァンクマイエル監督がなんとチェコより来日! 映画『アリス』『ルナシー』など、数々の映像作品で世界中のクリエイターを熱狂させ続けてきたヤン監督の最新作。シュルレアリストとして多岐にわたる活動を続け、77歳となっても衰えない創作意欲の秘密、また作品テーマに対する監督ならではの哲学を語ってくださいました。

「『夢』は芸術家にとって、創造の源泉です」

―  「夢」が今回の作品の主要なテーマとなっていますが、監督にとって夢とはどのようなものですか?

ヤン・シュヴァンクマイエル監督(以下、シュヴァンクマイエル) 今の文明は「夢」というものを完全に二つに分類してしまったと思います。夢の方では残念ながらお金が稼げないので、現実の方を重要視するようになったのが今の文明だと思います。しかし、私達の先祖は非常に夢を重要視していました。例えば色々な詩人などを思い浮かべていただくと分かります。私もそうした詩人や芸術家を3名ほどこの映画の中で引用しています。夢を軽視することによって、私達は自ら人生を貧しくしてしまっているというのが私の考えです。私は、夢というのは非常に純粋な想像力で、創造をしている芸術家にとっては大切な源泉です。

― ヤン監督は非常に多方面の活動をなさっていますが、その中で映画制作はどのような位置づけと考えておられますか?

シュヴァンクマイエル 私は自分の事を、映画の作り手や映画監督として捉えたことは一度もありません。元々勉強してきたことも、映画科ではなく演劇科を卒業しています。芸術というのは方法に依るものではなく、どんな方法でも芸術は芸術だと思っているので、実は70年代に5年間映画撮影を禁止されていた時期がありましたが、私にとってそれは大した打撃ではなくて、ちょうどその頃に、触覚と想像の関係について色々な作品を発表しました。

「私にとって、創作活動は妄想から解き放たれる”自己セラピー”のようなもの」

― 非常に長い間創作活動をなさっていて、ご高齢になられても未だにその意欲が衰えていない理由とは何でしょうか?

シュヴァンクマイエル 私はある種の妄想、執着にとりつかれているところがありますが、それがなくならない限りは、何らかの形で創作活動は続けていくと思います。もし、実際身体が衰えてきて映画の撮影が出来なくなった時には絵を描くとか、そういった他の方法を選ぶと思います。私にとって、妄想や執着から解き放たれる過程というのが創作活動であって、そういった意味ではある種”自己セラピー”のようなものだと思っています。

― この映画の中では「母親のイメージ」というのが非常に大きくフィーチャーされていますが、監督にとって母親というのはどういった存在でしょうか?

シュヴァンクマイエル 母親は決定者であり、しかも母親の方がより決定的な存在ですよね。父親というのは誰だか分からなかったり、居なくなってしまったりし得る存在。そう言った意味では母親は非常に強い存在だと言える思います。にもかかわらず、この文明においては何故か父親、父権の方が高次元にあるし、何となく母とか母性というものが二次的なものになっている。例えば父が神で母が自然というような見方が支配している、そういう意味では今の文明は堕落していると思います。チェコの格言には「男が本当に成人するのは母親が死んでから」というものがあります。

「この映画は“想像上の映画”であり、“創造する映画”。そして全ての解釈が正しい。」

― 最後に映画を観る皆さんにメッセージを。

シュヴァンクマイエル これから映画を観る方に私が何かお話しするというのは非常に難しいです。実は冒頭で、私がこの映画を紹介する部分があり、今この場で実物の私が話していますが、暗くなって映画が始まるとまた私が出て来ます。(会場笑い) そこで皆さんに解説をしたいと思いますので、是非そちらをお楽しみ下さい。ただ一つだけ言えるのは、この映画は“想像上の映画”であり、“創造する映画”です。ですから皆さんはこの映画を観る際に色々と解釈する必要があります。皆さんがどんな解釈をしたとしても、全ての解釈が正しいです。

▼『サヴァイヴィング ライフ -夢は第二の人生-』作品・公開情報
チェコ/2010年/108分/R18+
原題:”PREZIT SVUJ ZIVOT (TEORIE A PRAXE)”
英語題:”SURVIVING LIFE (THEORY AND PRACTICE)”
監督・脚本:ヤン・シュヴァンクマイエル
出演:ヴァーツラフ・ヘルシュス クラーク・イソヴァー ズザナ・クロネロヴァー エミーリア・ドシェコヴァー ダニエラ・バケロヴァー ほか
後援:駐日チェコ共和国大使館 CZECH CENTRE TOKYO
製作:Athanor,C-GA Film
提供:レン コーポレーション ディーライツ アウラ ユーリアンドデザイン
コピーライト:(C)ATHANOR
『サヴァイヴィング ライフ -夢は第二の人生-』公式サイト
※8月27日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムにてロードショー。順次全国公開。

取材・編集・文:しのぶ スチール撮影:杉木よしみ

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