『あしたのパスタはアルデンテ』-南イタリアの美しい街で紡がれる、笑って泣ける大家族の愛と絆の物語。

  • 2011年08月25日更新

名門一族が営む家業を継がず自由に生きるため、皆の前で“秘密”を告白する一大決心をした青年。同じ“秘密”を持つ兄に出し抜かれて、会社と大家族にどっぷりと関わることになった様子を、祖母の昔の切ない恋の思い出を織り交ぜながらユーモアたっぷりに描く。家族の強い絆と愛情を温かい目で見つめたスイートで少しビターな感動作。

― 兄の裏切りでパスタ会社をまかされるはめに!

作家志望の青年トンマーゾは、祖母の代からパスタ会社を営む名門一族の出身。兄アントニオの新社長就任ディナーに出席するため、ローマから故郷レッチェに帰って来る。彼は3つの秘密、“家族の望む経営学部ではなく文学部を卒業したこと、家業を継がず小説家になりたいこと、最大の秘密・ゲイであること”を家族に打ち明けたいと兄に相談。だが、ディナー当日、兄はトンマーゾより先に家族の前で衝撃の告白をする。「僕はゲイです」。当然兄は勘当され、父親は卒倒して入院、トンマーゾは秘密も告白できず恋人マルコの待つローマにも帰れず、共同経営者の娘アルバと会社をまかされるはめに ― 。

― 南イタリアの魅力と愛すべき登場人物に釘付け。

歴史ある美しいレッチェの町並み、明るい日射し、透明度の高い海、大家族で囲む食卓。南イタリアの魅力がぎゅっと詰まった本作を撮ったのは、ポスト・アルモドバルとも言われるフェルザン・オズペテク監督。イタリアの名門家族のしがらみや愛情を、時にコミカルに、時に涙とともに綴り、観る者の心を温かく満たしてくれる。

繊細で優しいトンマーゾと寂しげな表情のアントニオの兄弟も魅力的だが、脇を固める登場人物たちも愛すべき人たちばかり。マッチョで陽気でイケメン揃いのトンマーゾのゲイの友人たち(別名アルデンテ・ボーイズ)は、彼の家族の前でゲイっぽい仕草を封印(でも無理!)。共同経営者のキュートな娘アルバは、報われないとわかっていてもトンマーゾのことが気になる。そのほかにも、アルコール依存一歩手前の独身の叔母ルチアーナ、爆弾発言も多いが、心の中では若い頃の恋に思いを馳せている祖母など個性豊か。ニーナ・ジッリの挿入歌、60年代風の「50mila」(5万粒の涙~チンクアンタミラ)もパンチあふれる名曲だ。

― 祖母の厳しくも優しいメッセージ。

終盤、家族の目を開かせるために祖母が取った暴走行為は、意に反した生活を送らなくてはならなくなったトンマーゾ、家を出た兄アントニオ、そして体面を気にして“異端”をはじき出す家族に対する「自分の望みどおりに生きなさい」、「ありのままの姿を受け入れてあげて」というメッセージなのだろう。深く心に染み入るシーンだが、将来の明るい展望を予感させる感動的なラストへの重要な布石となる。

― 最後の締めは監督レシピのパスタで。

原題の“MINE VAGANTI”は「浮遊機雷」を意味する。“家族の中で浮いた存在”の比喩とのこと。この作品のホームページでは、監督のパスタレシピ、その名も「浮遊機雷」が掲載されている。シンプルな手順ながら、ズッキーニや松の実、ミントなどを使ったパスタはなかなかの美味。映画の余韻に浸りながら味わう逸品。ぜひお試しを! パスタの茹で加減はもちろんアルデンテで。

▼『あしたのパスタはアルデンテ』作品・公開情報
2010年/イタリア/カラー/113分
原題:”Mine Vaganti”
監督:フェルザン・オズペテク
脚本:フェルザン・オズペテク/イヴァン・コトロネーオ
出演:リッカルド・スカマルチョ ニコール・グリマウド アレッサンドロ・プレツィオージ 他
協力:イタリア文化会館 バリラジャパン株式会社
配給:セテラ・インターナショナル
コピーライト:(c)Fandango2010
『あしたのパスタはアルデンテ』公式サイト
※8月27日(土) シネスイッチ銀座ほか全国順次公開

文:吉永くま

▼サントラはいかが?

Mine Vaganti


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