『ムカデ人間』 北村昭博さん×塩田時敏さん トークショー―日本で初めてムカデ人間になった男と、日本で初めてムカデ人間を観た男。

  • 2011年08月09日更新

「複数の人間を口と肛門でつなげて『ムカデ人間』を作りたい」と欲した外科医の博士が、ひとりの男とふたりの女を拉致して、その欲求を実行に移す ― 世界中で物議を醸したホラー映画『ムカデ人間』は、2011年7月2日(土)のロードショーを皮切りに、日本でも話題沸騰。公開する劇場が続々と拡大しています。

公開初日、東京・渋谷のシネクイントでは、「ムカデ人間の先頭・カツロー」を演じた北村昭博さんと、映画評論家の塩田時敏さんによるトークショーが開催されました。↑の写真、左が北村さん、右が塩田さんです。塩田さんはゆうばり国際ファンタスティック映画祭のプログラミング・ディレクターで、本作は2010年にこの映画祭で上映されました。「日本で初めて『ムカデ人間』になった男」の北村さんと、「日本で初めて『ムカデ人間』を観た男」の塩田さんが繰り広げたトークの模様を、じっくりとお楽しみください。

「トム・シックス監督は(ディテールを)考えて作っています。たとえば、ドイツ人のハイター博士が、日本人とアメリカ人をつなげてムカデ人間にするという点には、第二次世界大戦が頭にあったようです」(北村さん)

塩田時敏さん(以下、塩田) トム・シックス監督の(「常軌を逸した医師が、外科手術で人間をつなげる」という、個性的な)発想は素晴らしいです。
近頃のホラー映画は、低予算で疑似ドキュメンタリー的な作品が多いですが、そんな中、シックス監督と『ムカデ人間』には、まったく違う新しい才能を手応えとして感じました。まるで、(サム・ライミ監督の)『死霊のはらわた』を観たときのような新鮮さを覚えました。

北村昭博さん(以下、北村) 子どもをレイプした犯人のニュースをテレビで観たシックス監督が、「こんなに非人道的な男は、まるでムカデのように人間の尻にくっつけてやる罪が一番ふさわしい!」と、正義感から憤ったことが、そもそものきっかけだったそうです。ムカデ人間にする刑罰があったら犯罪が減るのではないか、と考えたところから、「この発想はホラー映画にぴったりかもしれない」と発展していったようです。
(一見、突飛に見える映画ですが、ディテールを)監督はいろいろと考えて作っています。本人はこの作品をB級映画だと承知していて、いわゆる「つっこみどころ」もわかって撮ったので、なかなか公には言わないんですけどね。たとえば、ドイツ人のハイター博士が、日本人とアメリカ人をつなげてムカデ人間にするという点には、第二次世界大戦が頭にあったようですよ。

「シックス監督は、『性的な要素のない作品にしたい』と考えました」(北村さん)

塩田 ムカデ人間の先頭はなぜ、北村さんが演じるカツローだったのでしょうか? 男性が真ん中になって女性に挟まれるほうが、カツローには美味しいポジションではないかと思ったのですが。(笑)

北村 僕もそう思ったので、最初、「自分を真ん中にしてほしい」とシックス監督に頼んだんです。でも、監督はみっつの理由から、僕を真ん中にしました。
ひとつは、「性的な要素のない作品にしたい」という意向からです。男性がふたりの女性に挟まれると、性的かつ変態的な要素が強くなるので。
ふたつめは、日本語しか話せないカツローが先頭になることで、ハイター博士がムカデ人間をペットのように扱えるからです。博士は日本語がわかりません。彼にとって、ムカデ人間とコミュニケーションがとれないということは、とても重要でした。
みっつめは、カツローのうしろにつながるふたりの女性もまた、彼の話すことを理解できないからです。彼女たちは日本語がわからないアメリカ人なので、カツローがなにを言っても意味不明です。「コミュニケーションのとれない相手のうしろにつながるのは恐い」と監督は考えたようです。

塩田 ムカデ人間になって撮影されるのは大変だったでしょう?

北村 三人でつながって階段をのぼるシーンがありますが、(手足が)少しでも階段からずれたら、女優さんが首の骨を折る可能性があったんです。(ムカデ人間の体勢は)演じる役者の僕たちにはかなりつらくて、背中と首を痛めてしまうので、撮影期間中は毎晩、プロデューサーのイローナ・シックスさんがマッサージ師を手配してくれました。

「『ムカデ人間2』は、(過激すぎるという理由で)イギリスで上映禁止になりました」(北村さん)

北村 シックス監督は日本映画が大好きで、三池崇史監督の大ファンでもあるんですよ。僕が日本語を話すだけで、「ファンタスティック!」と喜んでくれるんです。(笑)
『ムカデ人間』の脚本には、すべてのキャラクターの台詞が書かれていませんでした。監督に信頼していただいていたので、自分で台詞を脚本に書きこんだんです。
日本人の俳優が外国映画に出演していると、僕はとても期待して観るのですが、端役だったり、台詞が不自然な日本語だったり、中国人や韓国人が日本人を演じていたりすると、とてもがっかりします。自分が日本人として外国の作品に出演するときも、同じ理由でがっかりしたことが多くありました。ですから、『ムカデ人間』に出演するにあたって、(本作を観てくださる)日本人をがっかりさせたくない、と思いました。むしろ、日本人が出演していることを誇りに感じていただけるくらいにしたい、というのが僕にとっては重要だったので、自らカツローの台詞を書きこんで、監督に了承をいただいたんです。役者にとても自由を与えてくださる監督だったので、やりやすかったです。

塩田 シックス監督はオランダ人ですね。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で来日したときは、カウボーイのような白いハットをかぶっていたのが印象的でした。(笑)

北村 「白いハットに、白い服」でかっちり決めているなど、監督はいつもスタイリッシュなんですよ。監督の妹で、『ムカデ人間』のプロデューサーでもあるイローナさんも美人ですが、とても商才に長けた女性でもあります。普通、『ムカデ人間』のような題材の作品は低予算で撮ろうとしますが、彼女はかなりの予算を組んで、一大ビジネスにしています。シックス兄妹はハリウッドでもとても注目されていて、ロサンゼルスで映画を撮る予定もあるようです。
また、シックス監督によると、『ムカデ人間』は三部作の予定だそうです。2は既に完成していてアメリカでは公開されましたが、イギリスでは(過激すぎるという理由で)公開禁止になりました。

塩田 北村さんは3にも出演されるんですか?

北村 それは極秘です。(笑) 本当なら、2についても話してはいけないことになってるんですよ。イローナさんには、「話したらムカデ人間にされるぞ」と脅されているんですから。(笑)

「本日、園子温監督が来場して、『ムカデ人間』を鑑賞しました」(塩田さん)

塩田 実は、公開初日の本日、(『冷たい熱帯魚』等の)園子温監督も来場して、『ムカデ人間』をご覧になりました。

北村 園監督はとても優しくて、僕の兄貴分のような人です。5年ほど前のことですが、彼がアメリカへ来たときに、通訳兼運転手として働きました。園監督の映画に出演させていただきたいです。僕、日本映画に出たいんですよ。
世界で通用する感性を得たかったので、高校を卒業してすぐにアメリカへ行きました。『ムカデ人間』のおかげでヨーロッパとアメリカでは自分の名前を知っていただけるようになりましたが、日本ではまだ知られざる存在なので、園監督のような素晴らしい才能のある監督と仕事をしたいです。「ハリウッドを倒せ!」というわけではありませんが、日本はそれくらいの(勢いがある)映画を撮る力があると思っています。(場内を見渡して)未来の映画監督はいますか? 僕、出演しますよ。ムカデ人間を演じるかどうかは、わからないですけど。(笑)
シックス監督が『ムカデ人間』でカツローを登場させた理由は、監督自身が日本映画のファンだからというのもありますが、世界のファンタスティック系の映画祭で日本映画がとても人気なので、そういうファン層を狙ったというのもあります。ですから、僕は日本映画の監督のかたがたをとても尊敬していますし、彼らがいなかったら、僕がムカデ人間の先頭を務めることもなかったと思うので、ひとりひとりに感謝したいくらいの気持ちでいっぱいです。

塩田 言うなれば、三池崇史の肛門に北村昭博の口がつながったようなものですね。(会場爆笑) 次は北村さんが、ご自分の肛門に日本の新しい才能をつなげて、アメリカへひっぱっていかないと。

北村 本当にその通りですね。いつでも肛門をあけておきます。(笑)

▼『ムカデ人間』作品・公開情報
オランダ・イギリス/2009年/90分
原題:”THE HUMAN CENTIPEDE (FIRST SEQUENCE)”
監督・脚本:トム・シックス
製作:イローナ・シックス トム・シックス
撮影:グーフ・デ・コニング
編集:ナイジェル・デ・ホンド
音楽:パトリック・サヴェージ オレグ・スピーズ
出演:ディーター・ラーザー 北村昭博 アシュリー・C・ウィリアムス アシュリン・イェニー
配給:トランスフォーマー
コピーライト:(C)2009 SIX ENTERTAINMENT
『ムカデ人間』公式サイト
※7月2日、シネクイント にて レイトロードショー!(全国順次)

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取材・編集・文:香ん乃 編集協力・スチール撮影:魚子

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