『モンスターズ/地球外生命体』―パニック映画の既成概念にとらわれず、恋愛ロードムービーの要素も兼ね備えた1本。

  • 2011年07月21日更新

2010年のカンヌ国際映画祭で上映され、クエンティン・タランティーノやピーター・ジャクソンも絶賛したギャレス・エドワーズ監督のデビュー作。総製作費1万5千ドル(約130万円)という低予算、主演の2人以外は現地のメキシコ人エキストラ、視覚効果のほとんどを自宅の地下室で完成させるといった条件下で製作されたとは思えないクオリティだ。

地球外生命体のサンプルを採取したNASAの探査機が、大気圏突入時にメキシコ上空で大破。その直後新種の地球外生命体が増殖し始め、メキシコの半分は危険地帯として隔離されてしまう。6年後、現地でスクープを狙うカメラマンのコールダーは、上司から怪我をした社長令嬢のサマンサをアメリカの国境まで送り届けるよう命令を受ける。2日後にはアメリカ軍が国境を閉鎖してしまうという状況下、2人はやむを得ず危険地帯を通る陸路を横断することに…。

― モンスター・パニック+恋愛ロードムービー

パニック映画の既成概念にとらわれず、恋愛ロードムービーの要素も兼ね備えた本作。過酷な道程でサマンサとコールダーの心が通う様子が、重苦しくなりがちなストーリーに柔らかさを与え、甘美な雰囲気と緊張感の融合は見事に成功している。

― 逃げ出せない苦悩が現実とシンクロする

物語の前半、モンスターはその姿をほとんど現さず、襲撃も延々と続くわけではない。2人が、トラック、バス、船とあらゆる手段を使って国境を目指す中で目にするのは、破壊された建物や戦車の残骸、轟音を上げて飛ぶヘリコプター。その光景がさらに恐怖を煽る。この状況で人々は、仕事や家族など生活基盤を置く土地から逃げることができず、普通の暮らしを維持しようと努めている。“米軍の爆撃” や“モンスター”に怯えながらの彼らの生活に、世界、そして日本の人々が直面している現実が重なる。

モンスターとの対峙シーンは意外にも美しく壮大。恐怖と唖然とするような心地良い裏切りを観客に与えながらも、最後の最後まで展開が読めないひねりの効いた演出が心憎い。その奇妙で不思議な余韻ゆえ、強い印象が残るに違いない

― 監督の次回作は新しいハリウッド版『GODZILA』

本作の成功でエドワーズ監督は、イギリスのエンパイア誌から『2010年に映画界でブレイクした新星10人』に選ばれたという。次回作のハリウッド版・新『GODZILA』を独自のセンスでどのように料理してくれるか楽しみである。

▼『モンスターズ/地球外生命体』作品・公開情報
2010年/イギリス/94分カラー/ドルビーデジタル/シネマスコープ
原題:”MONSTERS”
監督・脚本:ギャレス・エドワーズ
出演:ホイットニー・エイブル スクート・マクネイリー
コピーライト:(C)Vertigo Slate 2010
宣伝:ティー・ベーシック
配給:クロックワークス
『モンスターズ/地球外生命体』公式サイト
※2011年7月23日(土)より、シアターN渋谷他にて全国ロードショー

文:吉永くま


  • 2011年07月21日更新

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