『ふゆの獣』-ほとんど恋愛ドキュメンタリー。恋する獣=人間の生々しい本能をのぞき見る。

  • 2011年07月02日更新

同僚のシゲヒサを愛しながらも、浮気を問いただすことが出来ないユカコ。精神的に不安定になっているユカコは、振られたばかりのノボルの話を聞きながら自分を重ね、抑えきれないシゲヒサへの思いを爆発させる。一方、ノボルを振ったサエコはシゲヒサとの関係が浮気だと知りながらも深くはまっていく。「どうしても自分のものにしたい」それぞれの恋愛感情が肥大した時、抑えられていた気持ちがぶつかり合い、4人の関係が根底から揺らぐ。脚本はなく、即興で演じられた『ふゆの獣』では俳優が綿密に役のイメージを膨らませ、“演じる”のではなく、役を“生きる”。生々しく映し出された恋人たちの日常は実際に他人の恋愛をのぞき見ているかのような錯覚に陥る作品。第11回東京フィルメックス最優秀作品賞受賞作。



恋愛に没頭する4人。「どんな形でもこの恋を続けたい」という強い欲望。
ユカコは同じ職場に勤務するシゲヒサと付き合っている。彼の部屋で見つける女性の影にユカコは精神的に不安定になりながらも浮気を問いただすことが出来ない。ある日、同じ職場にいる、振られたばかりのノボルの言葉にユカコは自分を重ね、堰を切ったように話し始める。「長くつきあっているけれど、私、つきあってって言われたことないの。」恋人に受け入れられない不安を口にしながらも、恋人を信じ、この恋から離れたくない気持ちを噴出させていく。一方ノボルを振ったサエコはシゲヒサとの恋に没頭し、今まで以上にシゲヒサへの思いを募らせていった。抑えていたそれぞれの感情は「手に入れたい恋」に向かって増長し、ぶつけかり合い、4人の関係を根本から揺るがしていく。



脚本なし、渡された役に憑依する役者達
『ふゆの獣』に脚本はなく、役者に渡されるのは物語を形作る枠組み(プロット)だけ。役者は別途渡される役の背景を読み、即興で役を演じる。即興演技にあたり、重要なのは徹底的なイメージの作りこみ。ユカコを演じる加藤めぐみさんはシゲヒサとの関係性を構築するために100問程度の質問を投げかけて二人の関係を明確なものにしていったという。イメージを膨らませて作った人格はもはや作り物ではなく生々しく生きる一つの魂。その魂に乗り移られた状態-内田伸輝監督が言う“憑依”-で役者は恋愛をしていく。この製作プロセスがあるからこそ見苦しいまでの恋愛の生々しさをのぞき見ているような感覚に陥るのだ。


恋愛をする4つのパターン。あなたは誰の恋愛に自分を重ね合わせる?
恋愛なしには生きられない4人。しかしその向き合い方は4人とも異なる。恋人一筋だけれどその気持ちをうまく表現できない人。浮気相手にされていても一緒にいたい人。魅力的でモテる恋愛勝者。相手の気持ちを勘違いして失恋ばかりしている恋愛敗者。自分はどのパターンなのか?苦手な恋愛パターンはどのパターンか?それぞれに違う意見を持ち、違うタイプに属することに驚かされる。恋愛に正解なし。レイトショーが終わったら、朝まで恋愛について語りつくしてみてはどうだろう。


▼『ふゆの獣』作品・公開情報
日本/2010年/ 92分
監督・編集・構成&プロット・撮影・音響効果:内田伸輝
出演:加藤めぐみ 佐藤博行 高木公介 前川桃子
製作:映像工房NOBU
配給:マコトヤ
コピーライト:©映像工房NOBU
●『ふゆの獣』公式サイト
※2011年7月2日(土)より緊急レイトショー! テアトル新宿 他順次全国



『ふゆの獣』公開を記念して、内田伸輝監督作品『えてがみ』『かざあな』を劇場初上映!
▼『えてがみ』『かざあな』劇場情報
東京 K’s cinema 7/23(土)-7/29(金)
名古屋 シネマスコーレ 7/19(水)-7/22(金)
京都 京都みなみ会館 8/2(火)-8/7(日)
詳しくは『えてがみ』『かざあな』公式サイトをご覧ください。

▼関連記事
ミニシアターに行きたくなる監督達―東京フィルメックス、Q&Aハイライト
最優秀作品賞を受賞した『ふゆの獣』の内田伸輝監督から独占コメント!―第11回 東京フィルメックス 審査員記者会見・閉会式
第11回東京フィルメックス開幕―極上の映画セレクトショップへようこそ
園子温監督、内田伸輝監督、想田和弘監督の新作に注目!―第11回 東京フィルメックス ラインアップ記者会見
文:白玉


  • 2011年07月02日更新

トラックバックURL:http://mini-theater.com/2011/07/02/16870/trackback/