『小さな町の小さな映画館』―地元に愛され続けて93年になるミニシアター。

  • 2011年06月18日更新

― 北海道の小さな町で、「93年間」も営業が続いている映画館。

大黒座 ― 北海道の小さな漁師町・浦河町にある、客席48席のミニシアターである。創業は大正7年で、もともとは旅芸人や講談師を招いて上演する芝居小屋だった。昭和28年に220席を有する大きな映画館に改築されると、世の映画人気も手伝って、連日、大盛況。平成6年の改築で、現在のミニシアターに生まれ変わった。創業時から数えると、93年間も営業が続いていることになる。

現在の館主は、四代目の三上雅弘さん。母の雪子さん、妻の佳寿子さんとの三人で、この映画館を営んでいる。ドキュメンタリー映画『小さな町の小さな映画館』には、大黒座を切り盛りする三上さん一家と、この映画館を愛して支える地元の人々の生の想いと声があふれている。

長年、営業しているとはいえ、経営が苦しくないわけではない。当然ながら、大黒座にも、観客がひとりもはいらない日がある。「石にかじりついてでも、映画館の運営を続けたいとは思っていない」と館主の雅弘さんは語る。しかし、「経営が苦しいのは、(大黒座を)やめる理由にはならない」とも雅弘さんは言う。また、妻の佳寿子さんは、「映画館の仕事をするのは、映画が好きだから」と笑顔だ。浦河町で育った佳寿子さんは、若い頃から大黒座で観客として映画を観続けてきた住民のひとりである。

― 「ここで上映される作品なら観てみよう」という愛着と信頼を寄せられる映画館がある貴さ。

大黒座の常連客の中には、「もともと映画を観る習慣はなかったが、(この町に引っ越してきたのをきっかけに)大黒座で上映される作品はすべて観ている」という人がいる。また、「大黒座で上映されたから、知ることのできた映画がある」と語る町の人もいる。

どの映画を観ようかと作品を選ぶ以前に、「そこに映画館があるから、上映されているものを観る」という感覚は、現代の、特に都市部では薄れてきている。しかし、映画館へ通いつめた経験がある人なら、多かれ少なかれ、「あの映画館で上映される作品なら、観てみよう」と、特定の映画館に愛着と信頼を寄せたことがあるだろう。大切な気持ちを預けられるそんな映画館が自分の住む町にあるのは、映画ファンにとって一種の理想である。

― 町の映画館が存続するには、地域の人々の協力と応援が不可欠。

浦河町の人々にとって、「この町に大黒座があること」は、あたりまえで自然だ。しかし、そこに映画館が当然のように存在するためには、経営者の努力に加えて、地域の人々の支援と協力も不可欠である。浦河町には「浦河映画サークル」や「大黒座サポーターズクラブ」があって、映画ファン同士の交流や大黒座の応援に、ひと役もふた役も買っている。「わが町に映画館があること」を誇りに活動する地域の人々の姿から、「映画館が存在し続けるためのヒント」のひとつを教えてもらえる。

▼『小さな町の小さな映画館』作品・公開情報
2011年/日本/106分
プロデューサー・監督・撮影:森田惠子
構成・編集:四宮鉄男
語り:中村啓子
音楽:遠藤春雄
配給・製作:アルボス
『小さな町の小さな映画館』公式サイト
※2011年6月18日(土)より、ポレポレ東中野にてモーニング・ロードショー。

文:香ん乃


  • 2011年06月18日更新

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