「映画の國名作選II クロード・シャブロル未公開傑作選」―晩年期の日本未公開作『最後の賭け』、『甘い罠』、『悪の華』が遂に上映!

  • 2011年05月22日更新

2010年9月に80年の生涯を閉じた、フランス映画界の巨匠クロード・シャブロル監督。ジャン=リュック・ゴダールやフランスワ・トリュフォー、エリック・ロメールとともにヌーヴェル・ヴァーグの旗手として活躍し、生涯にわたり54本もの長編作品を世に送り出した。なかでも大ヒットした2作目の『いとこ同志』は、第9回ベルリン映画祭金熊賞を受賞。公開時日本でも鮮烈な印象を残した。「フランスのヒッチコック」の異名をとり、サスペンスやミステリーの名手として根強いファンを持つシャブロル監督だが、残念なことに日本未公開作が多い。

そんななか満を持して、渋谷のシアター・イメージフォーラムで2011年5月21日(土)より「クロード・シャブロル未公開傑作選」が上映される。晩年期の未公開作『最後の賭け』『甘い罠』『悪の華』の3本を公開。「ブルジョワ階級の退廃的なモラルやエキセントリックな犯罪などを描く時、芸術家としての真価を発揮する」といわれるように、フランス的でノーブルかつデカダンなシャブロル・テイストを存分に堪能できる。ファンならずともその独得の世界観に魅了されるだろう。

▼『最後の賭け』

1970年代後半以降、シャブロル作品のミューズとなったイザベル.ユペール(『8人の女たち』『ピアニスト』)と演技派ミシェル・セロー(『とまどい』『クリクリのいた夏』)の2人が詐欺師を演じる本作は、監督お得意のクールな心理サスペンスがなりをひそめ、軽妙さとブラック・ユーモアを全面に出した異色の犯罪スリラー。マフィアの金に手を付けた詐欺師コンビの運命はいかに? 雪山のスイス、南国のアンティル諸島等、多彩なロケ撮影と匠みなストーリーテリングで最後まで目が離せない快作。

― 二大スター演じる男女の駆け引きにも注目。

レトロな詐欺を働く人生の盛りを過ぎたコンビが、ひょんなことから自分たちの手に負えない組織犯罪に巻き込まれていく。軽いタッチが心地良く、旅する気分も味わえる。二大スター演じる男女の駆け引きも魅力的。人生の後半にこんな大人の恋愛を楽しんでみたい。

原題:RIEN NE VA PLUS
1997年/フランス/105分/カラー
出演:イザベル.ユペール ミシェル・セロー フランソワ・クリュゼ ほか
コピーライト:(C) Noune Jamet

▼『甘い罠』

アメリカの作家シャーロット・アームストロングの「見えない蜘蛛の巣」をもとに作られた本作は、心の深奥に潜む善と悪の葛藤をクールに描いた犯罪心理ドラマの傑作。平和なブルジョワ家庭が薄皮をはがすように崩壊していく物語を淡々と描写しながら、クライマックスでは観るものを慄然とさせるサスペンスの技巧はまさにシャブロルの独壇場。リストのピアノ曲「葬送」をはじめとしたクラッシック音楽の隠喩的使用とヒロイン役ユペールの完璧な演技は圧巻の一言!

― 一見、平穏な家庭の、すべてのバランスが崩れていく緊迫する展開が見事。

平穏に見える家庭の闇に響く得体の知れない不協和音。絵に描いたような家族団欒の光景が不穏な雰囲気を醸し出す。すべてのバランスが崩れていく緊迫する展開を見事に演出。イザベル・ユペールの張り付いたような表情が不気味だ。

原題:MERCI POUR LE CHOCOLAT
2000年/フランス/100分/カラー
出演:イザベル・ユペール ジャック・デュトロン アナ・ムグラリス ほか
コピーライト:(C) Jérémie Nassif

▼『悪の華』

第2次大戦末期、ドイツ占領下で起こった悲惨な事件の記憶を脈々と受け継ぐブルジョア一族。一見優雅で平安に満ちた家族に、1枚の中傷ビラが波紋を投げかける。物語の進行につれて徐々に暴かれる複雑で謎めいた血縁関係やブルジョア階級の退廃的なモラルを悪意に満ちた眼差しで映しとる演出は監督のお家芸。ドラマチックな階段場面はヒッチコック通のシャブロルならでは。ギリシャ悲劇的な拡張の高さをもった超一流のサスペンスに胸躍る。

― 登場人物たちの目には見えない心の悲鳴が、まるで耳元に聞こえてくるよう。

愛と秘密に彩られた有産階級の家族の歴史、濃厚でインモラルな人間関係が非現実的な世界へと誘う。家族という閉じた世界の中でしがらみや嘘が絡み合い、目には見えない登場人物たちの心の悲鳴が耳元で聞こえてくるようだ。衝撃のラストに向かって徐々に緊張感が高まる。ブノワ・マジメルの美しさも必見!

原題:LA FLEUR DU MAL
2000年/フランス/104分/カラー
出演:ナタリー・バイ ブノワ・マジメル ジュザンヌ・フロン ほか
コピーライト:(C) Jérémie Nassif

▼「映画の國名作選II クロード・シャブロル未公開傑作選」公開情報
『最後の賭け』 『甘い罠』 『悪の華』
配給:紀伊国屋書店 マーメイドフィルム
宣伝:VALERIA
配給協力:(社)コミュニティシネマセンター
公式サイト:「映画の國名作選II クロード・シャブロル未公開傑作選」
※2011年5月21日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムにて3週間限定公開! 後、全国順次公開。

文:吉永くま

改行

  • 2011年05月22日更新

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