『ゲンスブールと女たち』―フランスきっての伊達男の、名曲、ユーモア、気障、ロマンスが、たっぷり詰まったエンターテインメント。

  • 2011年05月21日更新

― セルジュ・ゲンスブールとは、一体どんな人物だったのか?

”ユダヤ人で醜男”というコンプレックスを抱えながら、ブリジット・バルドーやジェーン・バーキンなど、時めく数多の美女と浮き名を流したフランスきっての伊達男、セルジュ・ゲンスブール。ジャズ、シャンソン、フレンチ・ポップ ― 音楽史に刻まれる数々の名曲を生み出すと共に、華麗な女性遍歴や、性的な歌詞と反体制的スタイルでヨーロッパを騒がし続けたセルジュ・ゲンスブールとは、一体どんな人物だったのか? ― 没後20周年。人気B・D(バンド・デシネ)作家のジョアン・スファール監督が斬新な演出で魅せる、天才アーティストの愛と音楽と情熱のライフヒストリー。

セルジュ・ゲンスブールという名を知らなくとも、フランス・ギャルの『夢見るシャンソン人形』、ジェーン・バーキンの『ジュ・テーム・モア・ノン・ブリュ』などは、耳にしたことがある人も多いだろう。かく言う私も、その名と有名すぎる一部の曲を聞いたことがある程度のものであったが、本作を観て、彼と愛し合った往年の女優たち同様、一気にセルジュ・ゲンスブールの虜になってしまった。

― スーパースターではなく、ひとりの「人間」として、ゲンスブールを描いている。

『ゲンスブールと女たち』というタイトルが示すように、本作はゲンスブールの人生を彩った様々な女性達との絡みを筋に話が進められていく。酒とタバコ、音楽と自由をこよなく愛し、作詞家・作曲家・歌手・映画監督・俳優・画家とマルチな才能を発揮した彼は、紛れもなく希有な天才であり、そして極上の美女を魅惑する男であった。しかし、この映画に描かれているのは伊達や酔狂だけではない。厳格な父に無理矢理ピアノを弾かされる少年時代、絵でも音楽でもぱっとせず、迷いの晴れない画学生時代、生意気だったり小心者だったりという複雑な内面性の部分も合わせて、ただのスーパースターではなく、より人間として愛らしく表現されているあたりが、監督のゲンスブールに対する思いの強さを感じさせる。特に、幼いゲンスブール少年が絵や歌で空想に遊ぶシーンなどは、当時ユダヤ人の家庭に生まれ、決して自由な暮らしではなかったからこそ、彼は生涯”心の自由”を求め、独創的な歌詞や反体制の姿勢に帰着していったのではないかと想像させられた。

― 名曲と、ユーモアと、気障と、ロマンスがたっぷり詰まったエンターテインメント。

そして、何といっても見所は、ゲンスブールが作曲をするシーンである。彼を世に出した恩師のボリス・ヴィアンと即興で演奏するシーンは最高にエキサイティングだし、「あなたの曲を聞かせて」「最高に美しい作品を書いて」と女たちに求められデュエットで歌うシーンは色っぽく、何ともドキドキさせられる。とにかく何度でも繰り返し観たくなる名シーンが目白押しなのだ。ゲンスブールは、確かに端正とは言えない容姿(主演のエリック・エルモスニーノはゲンスブール本人に驚くほど似ている)ではあるが、彼の口から紡ぎだされる独特すぎるセンスの歌詞や、時にロマンティック、時に軽快でキャッチーな旋律のピアノに耳を傾けていると、だんだんと彼がこの上なくクールでセクシーな男に見えてくる。そんな彼に「君に一曲書いていいかい?」なんて言われた日には、どんな女性でも「ウィ!」と叫んでしまうに違いない。

名曲と、ユーモアと、気障と、ロマンスがたっぷり詰まったエンターテインメント。ゲンスブールを知らないあなたでも、フランス・カルチャーを知らないあなたでも、きっと味を占めてしまうだろう。

▼『ゲンスブールと女たち』
作品・公開情報

フランス・アメリカ/2010年/122分
原題:”GAINSBOURG (VIE HEROIQUE)”
監督:ジョアン・スファール
出演:エリック・エルモスニーノ ルーシー・ゴードン レティシア・カスタ ほか
配給:クロックワークス
コピーライト:(C)2010 ONE WORLD FILMS-STUDIO37-UNIVERSAL PICTURES INTERNATIONAL FRANCE – FRANCE 2 CINEMA – LILOU FILMS – XILAM FILMS
『ゲンスブールと女たち』公式サイト
※2011年5月21日(土)よりBunkamuraル・シネマ、新宿バルト9他にて全国ロードショー。

文:しのぶ

改行

  • 2011年05月21日更新

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