『歓待』-緊張感に潜む笑い。真剣、まじめな小林一家の運命は?

  • 2011年05月01日更新

下町の小さな印刷工場を営む小林一家の前に、住み込みで働きたいという男、加川が現れた。腕は確かだがどこか胡散臭い加川は、家族の中に入り込み、触れられたくないことを詮索し始める。ある日、家族が帰宅すると加川の妻と名乗るブラジル人女性がバスタオル一枚巻いて現れた。「コンニチハ」。戸惑う小林家の人々に加川夫妻はちゃっかりと夫婦の同居を依頼。加川夫婦の同居の目的は?そしてバランスの崩れた小林一家に平和は戻るのか?いたって真剣真面目な小林家の人々と加川夫妻の緊張感あふれる人間関係に潜む笑い。ハリウッドとは一線を画す新しい喜劇の形を楽しんで。4月23日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、順次全国公開 

戸惑いながら受け入れた怪しき同居人。彼が呼び込むのは家族の不幸か幸せか?
東京の下町で親の代から続く印刷業を営む小林幹夫。若い妻、前妻との間に生まれた幼い娘、出戻りの幹夫の妹の一家4人で静かに暮らす毎日。最近の大きな事件と言えば、飼っていたセイセイインコのピーちゃんが行方不明になり探していること。張り紙を見て、インコの情報を伝えに加川が工場訪ねてくる。印刷作業について経験があるという加川は、人出が足りない工場にとっては、すぐにでも雇いたい人材。とらえどころのない加川に胡散臭さを感じる家族達ではあるが、幹夫は住みこみで工場で働くことを加川に依頼する。ある日、外出先から家に戻るとバスタオルを巻いただけの金髪女性が挨拶をしてきた。アナベルというその女性は加川の妻でブラジル人だという。「ナニトゾ、ヨロシクオネガイシマス。ナニトゾ」。加川だけでなくアナベルも受け入れざる得なくなる一家。前妻に逃げられた夫、時々せわしなく出かける妻、留学したい出戻りの妹。遠慮なく家族の問題を訊ねてくる加川夫妻の言葉に、平和だった家族のバランスに変化が生じる。家族の様子をそっと窺う加川。「そろそろかな」。加川の一言は新しい人々を迎え入れる歓待の始まりだった。

 

喜劇色々。ワハハと笑うかフフフと笑うか。
「核となる部分は笑いとは違う部分で作っていますね。」という深田監督の言葉通り、『歓待』は下町の小さな印刷工場の家族の話。いたって地味。いたって真面目。平凡に粛々と生きる毎日の中で、家族にうまく説明できない問題を抱えながら、その問題にふたをして平和に暮らす小林家の人々。突然現れた同居人はその一番触れられたくないところばかりを狙って一家のバランスを壊していく。怪しい同居人と小林家の緊張感あふれるこの人間関係がなんともユーモラス。リラックスして笑うのではなく、緊張して笑う。今までにない笑いのスタイルだ。万人が笑える顔芸やアクションなどとは一線を画した深田コメディは観客の積み重ねていた時間や記憶の多様性を意識して、笑う場所を見る側にゆだねる作り。自分のツボにハマった時に、その笑いはボディブローのように効く。ハリウッド映画でワハハと笑った後にこそ、自分を重ね合わせ、真剣に生きる小林家の人々を見ながらフフフと笑ってみるもの楽しいものだ。第23回東京国際映画祭ある視点部門作品賞受賞作品。

▼『歓待』作品・公開情報
2010年/日本/カラー/1時間36分
監督・脚本・編集:深田晃司
プロデューサー:杉野希妃 深田晃司   芸術監督:平田オリザ
出演:山内健司 杉野希妃 古舘寛治 ブライアリー・ロング オノエリコ 兵藤公美

 Ⓒ2010「歓待」製作委員会

●『歓待』公式サイト

 ※4月23日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、順次全国公開

文:白玉 

  • 2011年05月01日更新

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