『キラー・インサイド・ミー』―今から約50年前に生まれたサイコキラーの心には、なにがある?

  • 2011年04月18日更新

ジム・トンプスンの小説『おれの中の殺し屋』を、マイケル・ウィンターボトム監督が映画化。現代のフィクションではまったく珍しくない「サイコキラー」だが、原作小説が発表されたのが1952年で、映画の舞台も1950年代のアメリカ。今から約50年前に着想されたサイコキラーの物語だと考えると、新鮮味と好奇心、なにより恐怖がいや増してくる。

1950年代、アメリカはテキサスの田舎町 ― 親切で柔和な保安官助手のルー(ケイシー・アフレック)は、絵に描いたような好青年。ある日、売春婦のジョイス(ジェシカ・アルバ)に注意を勧告するため、ルーは彼女のもとを訪れる。激しく抵抗してきたジョイスを殴打するルーだが、以後、ふたりは密会を重ねるようになる。ジョイスに暴力をふるったことをきっかけに、ルーの潜在的な凶暴性が目覚めて……。

普段は温和な青年がサイコキラーに変貌してからの姿を追ったサスペンス。ルーは主として「愛する者」に攻撃の矛先を向けるが、通りすがりの人間にも残虐な仕打ちをする。攻撃の対象が身近な人物だけなら、「彼が狂気にかられる具体的な理由」を想像しやすいだろう。しかし、ルーはまったくの他人をも涼しい表情で痛めつけるから、彼の動機が特定できないあまり、不気味さとやるせなさが募ってくる。

ルーを演じたのはケイシー・アフレック。ご存じ、ベン・アフレックの実弟である。「無垢」を連想させる表情で人を手痛く殴打するルーの姿を見ていると、恐怖と同時に憐れみを覚える。彼だけではない。ジェシカ・アルバが演じた売春婦のジョイスも、ケイト・ハドソンが演じたルーの恋人・エイミーも、ルーへの「無垢」な想いを根底にいだいているのがよく見えるから、同情よりも憐憫が先に立つ。

「なぜ、ルーが人を手にかけるのか」、その理由と意味は、明確には描かれていない。だが、ルーの心理を推理させるための伏線とヒントは、さりげなくも処々にちりばめられている。彼を社会病質人格と見なして「単純なサイコパスの物語だ」と考えるか、情報を自分なりにつなぎあわせていった結果、ルーの行動に理由と意味を見いだせるかは、観る人それぞれの観察眼と想像力に懸かっていると言えるだろう。

▼『キラー・インサイド・ミー』作品・公開情報

アメリカ・スウェーデン・イギリス・カナダ/2010年/109分
原題:”THE KILLER INSIDE ME”
監督:マイケル・ウィンターボトム
原作:ジム・トンプスン(『おれの中の殺し屋』扶桑社海外文庫)
出演:ケイシー・アフレック ケイト・ハドソン ジェシカ・アルバ サイモン・ベイカー ビル・プルマン ネッド・ビーティ イライアス・コティーズ ほか
配給:日活
コピーライト:(c)Copyright 2010 KIM PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.
『キラー・インサイド・ミー』公式サイト
※2011年4月16日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー。

文:香ん乃

《観てから読む? 読んでから観る?》

おれの中の殺し屋 (扶桑社ミステリー)

改行

  • 2011年04月18日更新

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