『ビー・デビル』-救いを求める手を黙殺する人々。物語はそこから始まる

  • 2011年03月25日更新

『ビー・デビル』サブ①ソウルで働くヘウォンはすり減った心を癒すため、幼少期に過ごした孤島で休暇を過ごす。島には幼馴染のボンナムが、温かくヘウォンを迎える。しかし、へウォンが見たのはボンナムに対する直視できない夫や姑の仕打ち。自由に生きるヘウォンを見たボンナムは村から脱出しようと考えるが。
キム・ギドク監督に師事をしたチャン・チョルス監督の長編第一作。

 

9人の住民が住む隔離された島。密閉された人間関係が生み出す出来事とは?
『ビー・デビル』メインソウルで働くヘウォンは仕事でのストレスからすり減った心を癒すため、幼少期に過ごした孤島で休暇を過ごすことになる。住人9人のその村には幼馴染のボンナムが今でも住んでおり、温かくヘウォンを迎える。しかし、古いしきたりの生きる田舎町では夫や姑の権力が強く、嫁であるボンナムは日々、心と体を傷つけられる毎日を送っていた。自由に生きるヘウォンを見たボンナムは一人娘とともに村から脱出しようと考える。脱出の朝、ボンナムと娘を待ち構えていたのは夫と無言のまま成り行きをただ見ている村人の姿。怒りにまかせた夫の仕打ちに、ボンナムの押さえていた感情が一気に暴走を始める。

殺人鬼ではなく、救いを求める手を無言で見過ごす人々が生み出す悲劇。
『ビー・デビル』サブ③ボンナムは夫と娘と暮らす、ごく平凡な女性。娘をこよなく愛し、家を支えるために身を粉にして働くボンナムに村の生活はあまりに過酷。ソウルのような都会とは違い、島での暮らしは昔ながらの古い考えに支配され、嫁であるボンナムは夫や姑にとって、所有物に過ぎず、同等の立場でものが言えるような関係性はない。張り裂けそうな心を抱えるボンナムのもう一つの試練は、その厳しい状況をただ見るだけでなにもしない村人達。心の闇は暴力をふるう夫と暴言をはく姑から生まれたのかもしれないが、暴走する彼女を生んだものはそれだけなのか?過激な描写に目を奪われるが、チャン・チョルス監督が描こうとした「無言で悲惨な状況を見過ごすことも、一つの暴力になりうる」という点にも目を向けて欲しい。

  

揺さぶる長編第一作目を仕上げたチャン・チョルス監督とキム・ギドク監督の緊密な関係
『ビー・デビル』サブ②ボンナムの心の闇を素手でつかみ出すのはチャン・チョルス監督。ヴェネツィア国際映画祭、ベルリン国際映画祭で数々の賞を受賞するキム・ギドク監督に師事し、キム監督同様、人間の持つ心の闇を見つめる注目の若手監督の一人。「たとえ、小さな制作規模でも、強い印象を持つ映画は作れる」とキム監督の信念からこの作品を撮ってみようと感じたという。師匠、キム・ギドク監督をご覧いただいている方はぜひ、作品を見比べて二人の監督の中に流れる同じ遺伝子を感じていただきたい。

『ビーデビル』サブ⑧『ビー・デビル』作品・公開情報
2010年/韓国/115分
監督:チャン・チョルス
脚本:チェ・クァンヨン
出演:ソ・ヨンヒ、チ・ソンウォン
配給:キングレコード株式会社
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『ビー・デビル』作品情報

※ 3/26(土) シアターN渋谷他にて全国順次ロードショー

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文:白玉

  • 2011年03月25日更新

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