カラフルでポップな台北を疾走する幸せな撮影-『台北の朝、僕は恋をする』アーヴィン・チェン監督インタビュー

  • 2011年03月22日更新

ダンスr故エドワード・ヤン監督に師事し、最後の弟子とされるアーヴィン・チェン監督。長編第一作となる『台北の朝、僕は恋をする』ではベルリン国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞し、アジア発信の注目作品となった。監督の描く、台北は日常でありながらも、人も街も彩り豊かでポップで軽快。恋の街パリとは違うけれども、ロマンチックな夜があり、そこから恋が生まれるような場所として台北を映しだしたかったと語るアーヴィン・チェン監督に台北を駆け抜けた撮影現場、そして俳優、アンバー・クォさん、ジャック・ヤオさんとのエピソードをたっぷり語っていただきました。

 

 

美しく切り取られた台北。疾走する撮影現場の幸せなお話
IMG_2665アーヴィン・チェン監督がインタビュー中に楽しそうに見せてくれたのは『台北の朝、僕は恋をする』のメイキングブック。2000部限定で監督が自費出版した貴重な一冊だ。開いてみると、カラフルでポップな衣装のイメージ、美術が制作した部屋のデザイン、カメラマンのフィルムスピードに関するメモ、と映画に関わる全ての記録が凝縮されている。「映画は一人でつくるものではなく、色々な人の思いや時間があって出来上がっているもの」と語る監督。スタッフとキャストで作り上げる疾走感あふれる楽しい撮影現場を振り返っていただきました。

 

初恋の時の頃の“朝がこなければいいのに”と思う気持ちを出したかった。

サブ③r– 映像を見させていただいて、台北の夜の街が非常に幻想的に描かれていました。
なによりも台北の夜の美しさをとらえようと心掛けました。一晩のうちに描かれるロマンスですから、日が暮れ、日が昇るまでの感じ、始めて恋に落ちていく感じ。初恋の時って朝が来なければいいのにと思いますよね。その感じを出したかったのです。

 

– (台北と対比して)この映画の中にパリのイメージを大切にしているということで、パリのイメージと言うのはどのようなイメージを描かれていますか?
自分のパリのイメージだと、絵葉書のようなロマンティックで理想的な街、皆さんが思うのと同じです。今回は皆が思う素敵でロマンチックな完璧なパリと台北を対比させました。台北にも同じようにロマンスも見つかるし、街を歩けば音楽も耳に出来る。誰に聞いても一番ロマンティックな街はパリだけれど、台湾にも同じような感覚を見つけられる部分を描きたかったのです。

 

台北自体が撮影所。スタッフ一丸となって走りながら撮影しました。
IMG_2669– 夜市とか公園などロケのシーンがたくさんでてくるのですが、ロケの中でも特に苦労した部分などはありますか
たくさん人がいるシーンというのは苦労しました。製作費がたくさんあったわけではないので、自分たちが雇ったエキストラでないことが多かったです。夜の市場も実際に(市場に)いる方達が入り、そこでアンバー・クォさんのような有名な女優さんが来ると撮影は更にハードになりますが、それも楽しかったですね。台北という街自体が撮影所の様な感じでキャスト、スタッフ一丸となって走りながらシーンを撮っていきました。このメンバーに会えたというのが、苦労を感じさせないくらい楽しかったです。

 

アンバーさんはテレビ的な演技から解き放たせてあげなければなりませんでした。いかに演じるというよりも、(自分を)いかに解き放つかが大切

スージーr― 撮影前にワークショップをやられたということで、どのようなワークショップだったのでしょうか?
ワークショップではゲームを主にやっていて、みんなで遊んでいる感じでした。プロの俳優でない方も多く参加していましたので、リラックスして即興で演じてもらったんです。アンバー(クォ)さんの場合だったらスージーが本屋さんで仕事をしているシチュエーションを即興で演じてもらうという。それぞれのキャラクターがどういうキャラクターなのかということを体感してもらえるようなエクササイズを取り入れました。アンバーさんは、テレビドラマしか出演していないので、テレビ的な演技から解き放たせてあげなければなりません。(ワークショップを通して)彼女自身も演技をすることはいかに演じるというよりも、いかに解き放つか(自分を)かが大切なんだという事を分かってくれたんじゃないかなと思います。

 

カイr― 主役のジャック・ヤオさんですが、彼には演技においてはどのようなことを指示されたのでしょうか?
ジャックは演じている役柄(カイ)に非常に似ているんですね。ですから、今回の決め手は演技をするのではなく、ただ自分であるということを心がけてもらいました。キャラクターの状況を把握してもらって、自分が撮影されている事を忘れてもらうということが一番心を砕いたことなんです。特に気に入っているシーンは公園とエンディングのダンスをしているシーン。演出をつけていなんですね。キャラクターの置かれている世界に役者自身が身を置いているところをいかに撮るか、いかに引き出すかというのがポイントでした。

 30年代40年代のジャズをもとに膨らむ音楽。  

IMG_2667― 音楽が可愛らしくて、この映画にマッチしています。監督が音楽の製作者の方にどのようなイメージを伝えていったのでしょうか。
音楽は早い段階から制作を開始していました。メインテーマは撮影中に既にあったんです。もともとジャズっぽい音楽がいいなということで、映画音楽を全くやったことのないミュージシャンの方に作曲をお願いしました。自分が脚本を執筆している時に聴いていた、30年代40年代のジャズを彼に聴かせて、この作品はこういう感じの質感になるからと依頼をしたんです。公園のダンスシーンで使う楽曲を一本作ってもらったら、かなり自分のイメージ通りだったので、彼に全編お願いしました。その一曲を実際の撮影の公園のシーンでも本屋さんでもかけて使ったりもしたんです。

 

 

IMG_2656監督・脚本:アーヴィン・チェン
1978年11月26日生まれ、米国ボストン出身。台湾・台北をベースにする中国系アメリカ人。カリフォルニア大学バークレー校で建築デザインを専攻。卒業後、南カリフォルニア大学(USC)大学院の映画芸術学科に進み、修士課程終了前に台湾の映画監督、エドワード・ヤンに師事するため台北に移り住む。ヤン監督が亡くなるまで、未完となってしまったアニメ作品『追風』の企画、脚本開発に携わる。’06年に制作した短編『美 MEI』は第57回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞(全米監督協会賞では学生賞選外佳作及び英国学生アカデミー賞短編部門次点となっている)。本作品では’10年第60回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門に出品され、最優秀アジア映画賞を受賞した。

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取材・編集・文・スチール撮影:白玉


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