荒川修作の幻の長編映画『Why not』が12年ぶりに解禁!―『死なない子供、荒川修作』公開前夜イベント

  • 2011年02月02日更新

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荒川修作の幻の長編映画『Why not』が12年ぶりに解禁! 『死なない子供、荒川修作』公開前夜イベントをリポートします。

2010年12月17日(金)、「人間は死なない」と断言した男と、「死なない家」に住んだ人々の希望のドキュメンタリー、山岡信貴監督『死なない子供、荒川修作』の公開前夜イベントが行われ、荒川修作の幻の長編映画『Why not』が上映されました。完成から40年の時を経て、渋谷慶一郎によるその夜限りのインプロビゼーション(即興演奏)が映像とシンクロし、ミニマリズムを極めたエクスペリメンタルムービーが新たな生命を得て現代に蘇る。

2010年12月17日(金)の夜、六本木のライブハウス「音楽実験室 新世界」にてついにイベント開始。100名ほどのキャパシティのスペースは、若い世代から昔の荒川氏を知る50代まで、幅広い客層ですぐに埋め尽くされました。

20:00、まず『死なない子供、荒川修作』の予告編が上映された後、本作の監督・山岡貴信氏と、荒川修作東京事務所代表の本間桃世氏が登壇し約10分ほどのトーク。『Why not』についてや、荒川氏に対する思いを語られました。

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●映画『Why not』について

本間 荒川修作/マドリン・ギンズの二人三脚が一番盛り上がっていく時代に作られた作品。ナレーションをマドリンがやっているんですが、マドリンに聞くと、当時の社会背景―フェミニズムという流れがNYにある時を色濃く反映しているんだと言っていました。見ると、そうともあまり思えないんですけど(笑)。

山岡 一見すると、荒川さんが当時画家だった頃の代表作―ソリッドで化学的な作品群から断絶されたような印象を受けます。けれど、その生々しい感じを乗り越えて見ると「人と環境との関わり」をこの頃から考えているのが分かる。

本間 実は、(テーマは)ずっと一貫している。少しもぶれていないということが分かります。

●荒川修作と音楽について

山岡 あともう一つ重要なのは、荒川さんが音についてどう考えていたかは、多分『Why not』以外では分からない。僕は荒川さんの言う「外在化した生」、環境と僕たちがいて、そこで作られる生命というのは、音楽というものにもの凄く近いんじゃないかと。それを荒川さんに一番聞いてみたかった。今回、(映画の)音楽を渋谷(慶一朗)さんに頼んだのも、そこに繋がっています。渋谷さんの音楽は空間そのものを作るような、作ることそのもののような印象だから。

本間 映画の音楽を渋谷さんが担当して下さると聞いた時に、荒川さんはかなり驚いていたようです。だから完成した作品をぜひ見てほしかったし、今日、ここのどこかに立ち会って見ていてほしいなと思います。

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そしていよいよ『Why not』上映スタート!

モノクロの画面に映し出される美しい白人女性。

その女性が次々服を脱ぎ捨て、机に体を這わせ始める。皆「何が始まったんだ?!」と思って様子を見ていたところ、渋谷氏が動き出し、何かノイズのような音が響き始める。

音の正体はなんとボールペンと紙。ペンと紙が擦り合わされる音をマイクで拾っていたのだった! 不思議と映像とマッチし、心地よく耳に響く音に、場内も渋谷氏の作る空間に入り込んでいく。徐々にPCやシーケンサーから造り出されるノイズ音が増えていき、中盤には凄まじくも美しい轟音が。

映画では女性が様々な物や家具、そして自分の身体を、その形や重み、存在を確かめるように触れてく。終盤には女性の自慰行為がヒートアップ。自転車の後輪を自分の股間に押し付け、ペダルを回すというエロティックな映像には、渋谷氏の美しすぎるピアノ演奏という相反するコラボレーション。皆、身じろぎせず、その異様な雰囲気に酔いつつスクリーンを見つめ続けていた。

クライマックスでは、池上高志氏(複雑系科学者)がNYので収録したマドリン・ギンズの今現在の肉声を、元のナレーションとマッシュアップさせるというシークレット演出もプラス。

自分の意識もどこか別次元に飛んでしまいそうな、刺激的な110分間。

上映終了後、少しぼーっとしていると、渋谷氏が予定外のピアノ演奏をサービスしてくれた。映画『死なない子供、荒川修作』のエンディング曲“死なないための葬送曲”に耳を傾けながら、故・荒川修作に思いを馳せる静かな時間で、しっとりとイベントの幕は閉じたのでした。

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▼『Why not (A Serenade of Eschatological Ecology)』
作品情報

日本/1969年/110分
監督・脚本:荒川修作
ナレーション:マドリン・ギンズ
音楽:一柳 慧
主演:メラニー・ウィンドウ

【概要】
映画『Why not』」は荒川修作が1969年に初めて監督した映像作品。
同年ホイットニー美術館、草月アート・センターのアンダーグラウンド映画シリーズとして公開され好評を博した。
映画音楽には、図形楽譜や不確定性の音楽の第一人者でもある作曲家・一柳慧が参加。
「新しい日本の風景を建築し、常識を変え、日常の生活空間を創りだすために-荒川修作/マドリン・ギンズ展」で公開され、今回が12年ぶりの東京での公開となる。

音楽実験室 新世界
〒106-0031 東京都港区西麻布1-8-4 B1
(最寄り駅:日比谷線六本木駅 2番出口)
TEL:03-5772-6767
FAX: 03-5772-6797

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『死なない子供、荒川修作』作品紹介

文:しのぶ
改行

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