『その街のこども 劇場版』

  • 2011年01月19日更新

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1995年1月17日 午前5時46分、街は一瞬にして破壊され、ぼくたちは生き残った ―

こどもの頃に阪神・淡路大震災を体験し、今は東京で暮らす勇治(森山未來)と美夏(佐藤江梨子)。「追悼のつどい」が行われる前日、偶然神戸で知り合った二人は、なぜか震災15年目の朝を迎えるまで行動を共にすることになる。かつては被災地だった夜の街を歩きながら、二人は少しずつ当時の記憶を紐解いてゆく。

震災からちょうど15年目にあたる2010年1月17日、NHKで放映されたドラマが大きな反響を呼び、第36回放送文化基金賞を受賞、遂には劇場版となったのが本作。主演の森山未來と佐藤江梨子は実際の震災体験者であり、ストーリー上も実年齢のまま登場する。本当に「その街のこども」だった彼らが演じるのはあくまでフィクションの物語だが、二人の口から語られる複雑な思いや逡巡する姿からは、ニュースやドキュメンタリーが訴えかけてくる「震災」とはまた違う側面のリアリティ、共感を得られる作品に仕上がっている。

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この作品の特筆すべきは、まずタイトルの秀逸さにあると思う。筆者自身も実は震災体験者で、当時は大阪在住の中学生だった。つまり、「その隣街のこども」だったわけだが、たとえ影響の少なかった隣街であれ、その時の恐怖と衝撃は今でも絶対に忘れることはできない。この映画を見て、同じように思う人が何人いるだろう。被災者の誰もが「その街のこども」だった。主人公二人の話は数ある中の一部であり、様々な人間の「その後」があるのだと想起させられる。

「神戸のことなんか忘れたふりして生きてこ、そう思っててんけど。」

震災で負った心の傷に向き合おうとする美香。それに引っ張られるように、次第に過去を手繰り寄せはじめる勇治。そんな二人と一緒に、私達もそれぞれの「あの日」思い出していく。忘れたい、忘れられない、忘れたくない、忘れてはいけない。凄惨で痛ましい事実の周りには、多くの複雑な思いがあるだろうが、それでも人は生きて行かなければならない。街を歩き回った美香と勇治が朝を迎える時、新しい一歩を踏み出した二人の表情は、切なくも清々しかった。

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▼『その街のこども 劇場版』
作品・公開情報

日本/2010年/83分
監督:井上剛
脚本:渡辺あや
音楽:大友良英
出演:森山未來 佐藤江梨子
津田寛治 白木利周 他
配給:トランスフォーマー
コピーライト:(C)2010NHK
『その街のこども 劇場版』公式サイト
※2011年1月15日(土)より、東京都写真美術館ホール、池袋シネマ・ロサほか全国順次ロードショー。

文:しのぶ
改行

  • 2011年01月19日更新

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