『オボエテイル』 明石知幸監督(第2話『前世の記憶』) インタビュー

  • 2011年01月08日更新

akashi

2005年の作品完成から約5年。諸事情から公開が凍結されていたオムニバス・ミステリー映画『オボエテイル』が、2011年1月8日(土)より新宿K’s cinemaほかにて、ついに緊急公開されます!

プロジェクトの中心を担い、また第2話『前世の記憶』のメガホンをとった明石知幸監督に喜びの声をお聞きしました。

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― 5年の歳月を経て劇場公開が決定した今の気持ちをお聞かせください。

明石知幸監督(以下、明石) 原作の高橋克彦さんから直木賞受賞作の代表作をいただいて映画化したのに、それを公開できなかったことが、ずっと心に刺さった大きな棘でした。それが解消できてほっとしたというのが一番の感想です。

― 当時作品に参加したスタッフや出演者の方々の反応はいかがですか。

明石 スタッフはすごく喜んでくれているようです。自分が関わった作品には愛着を持っているし、それがお客さんの目に触れるということは映画作りの中で一番の喜びなので。また僕が直接聞いたわけではありませんが、出演者にしても時が経って自分たちの出演した作品が実績として出るということは嬉しいことだと思いますね。

― 今回作品をご覧になった印象は?

明石 5年ぶりに作品を見て、すごく真摯に作っているなと思いました。タイムカプセルみたいなところってありますよね。自分自身がその当時何を考えていたのかなど、そういうことが見えてとても新鮮な感じがしました。

― 当時に引き戻されるという感じですか。

明石 引き戻されるというより、その時自分がどんな思いで撮影していたのかが思い起こされて、「あっ、愛おしいな」という感じです。特にこの作品では僕が企画を主導して、日活の後輩たちに他の2話の監督をお願いしたり、高橋さんに直接原作権の交渉をしたといういきさつがありました。一監督というだけでなく企画を引っ張ってきた責任もあったので、それだけに感慨もひとしおです。

― 『前世の記憶』では原作をどのように映像化しようと思ったのでしょうか。

明石 『遠い記憶』と『緋い記憶』は信頼のおける後輩の芳田、久保両監督に任せましたが、芳田はすごく哲学的な人間で論理的に突き詰めるタイプ、久保もすごく真摯に作品に取り組むタイプなんです。だから、とにかく自分はエンターテイメントに徹しようというのがありました。エンターテイメントにするにはどうしようか、やはり『ローズマリーの赤ちゃん』を彷彿させるものにしよう、という形で取り組みました。

― 『オボエテイル』というホラーテイストのタイトルがついていますが、各作品の奥底には「悲しみ」が潜んでいるような気がしました。

明石 どの作品もとても切ないものになっていると思います。「抒情ホラー」って呼んでいるんですけどね。高橋さんの原作のリリカルな部分を出そうということ、ホラーというジャンルではあるけれども抒情性を確立させようということが、3人の監督の統一テーマでもありました。

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― 『前世の記憶』では、現在の修子の場面では色を抑え、記憶の部分では色鮮やかに描かれています。

明石 通常だと回想場面をセピア色やアンバー調にして褪色させるのですが、あの主人公の女性から見ると、自分の生きている今の時代よりも過去の時代、少年であった時代の方が輝いていたのではないかと思い、通常の手法とは逆転させたんです。自分が男の子だった生涯の方がいきいきしていたのではないかな、という意味を込めました。

― 前世の記憶を信じていますか。

明石 デジャブっていう感覚がありますよね。あれってそうなんじゃないかと思うんです。逆に予知夢みたいなものを見たこともあります。高橋さんも、それは歪んだ記憶じゃないかとおっしゃっているんですね。歪んだ記憶によって過去のことを思い出したり、それが自分の行動を左右したりするということってあるのではないかという気がします。自分の前世があったとして、それが今現在の自分の行動や記憶に影響を与えるということがあり得ると僕は信じています。

― 修子の少女時代を演じた子役の演技が印象に残ります。

明石 永井穂花ちゃんは当時4歳で、オーディションで選びました。彼女はすごいですよね。撮影中、僕はあの子とご飯食べるのがすごく楽しかったんですよ(笑)。

― 各作品とも監督の個性が出ていた一方、雰囲気やトーンが見事に統一されていました。

明石 3作品とも最初は脚本を久保が書き、『遠い記憶』についてはその後芳田がリライトしたので、その点で統一感はあったと思います。また、実際カメラマンや照明技師も日活時代からの長い付き合いなので、それぞれ監督の個性はあっても、現場の色や灯りなどうまく全体のトーンを統一してくれたのではないかと思います。その辺のチームワークというかコミュニケーションはものすごく良かったです。また、映画のカラーというのはロケーションした土地の空気感だと思うのですが、盛岡で同じ時期にオールロケをやったのでそれが大きかったのでしょう。

― 盛岡での撮影はいかがでしたか。

明石 盛岡自体がコンパクトな街なので、どのロケ場所も近いのでとても便利でした。大変だったのは撮影日数がタイトだったことですね。今年の10月の盛岡映画祭でこの作品を上映した時に、作品に参加したエキストラの人なども来てくれて、やっと公開になるということで喜んでくれました。
原作者の高橋さんは、撮影時にも現場に来てくれたのですが、今回「5年前は客観的に観られなかったけれど今は純粋に作品として観ることができ、自分が書いたときの心情を各監督が一生懸命辿ろうとしてくれていることがわかり、それが嬉しかった」とおっしゃってくださいました。

― 高橋さんは盛岡を舞台にした作品を多く執筆されています。監督はご出身の徳島で映画を撮りたいという希望はありますか。

明石 ハンセン病作家の北条民雄と川端康成の友情が描かれている「火花」というノンフィクション作品があります。北条はまさに僕の地元の人間なんです。何年か前にこの作品の映画化を一生懸命進めていたのですが、うまくいかず断念しました。でもすごく良い話なので、何年かのうちに実現させたいと思っています。

― 次回作の構想を教えてください。

明石 戦闘シーンのない戦争映画を撮りたいなと思っています。日本の「ものづくり」の原点に携わった人たちについてのストーリーです。僕は撮影所育ちでアナログ人間なので、この作品ではCGよりもアナログの持つ凄みというか重量感をきちんと出さなくてはいけないと考えています。

紆余曲折を経て公開に漕ぎつけた本作。明石監督の喜びと安堵の混在した表情が印象的でした。3作品とも背筋が寒くなるような怖さの裏に悲しさや切なさがあり、監督の「抒情ホラー」という言葉に思わず納得。まぼろしのオムニバス映画をぜひこの機会に!

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●『オボエテイル』 作品紹介

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▼『オボエテイル』作品・公開情報
日本/2005年→2010年//125分
第1話『遠い記憶』
監督・脚本:芳田秀明
出演:村上淳 麻生祐未
浅井江理名 鈴木颯人(子役) 吉田日出子
第2話『前世の記憶』
監督:明石知幸
脚本:久保朝洋
出演:中村美玲 葛山信吾
結城しのぶ 島かおり 篠井英介
第3話『緋い記憶』
監督・脚本:久保朝洋
出演:香川照之 光石研
柄本時生 渡辺真起子 螢雪次郎
配給宣伝:生駒隆始
宣伝:ブラウニー
コピーライト:(C)2005(株)ベルウッド
※2011年1月8日(土)より、新宿K’s cinema、横浜ニューテアトルにてロードショー。

取材・編集・文・スチール撮影:吉永くま
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