『オボエテイル』

  • 2011年01月08日更新

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封印してしまった記憶やコントロールできない記憶が、現在の自分を支配することがある。

そんな“記憶”をモチーフにした高橋克彦の小説の中から、直木賞受賞作「緋い記憶」など3本を映画化。2005年の完成後、諸事情により公開が凍結されていたまぼろしのオムニバス作品が5年の時を経てついに公開される。

盛岡でオールロケを行い、3本とも「抒情ホラー」という統一したコンセプトを念頭に置いて作ったという本作。怖さと切なさと入り混じったストーリーとどこか懐かしさを感じさせる映像は、日本人の心にしっくりくるに違いない。

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第1話 『遠い記憶』

監督・脚本:芳田英明
出演:村上淳 麻生祐未
浅井江理名 鈴木颯人(子役)
吉田日出子

新進作家の倉本雄二は、東京で母と2人で暮らしている。3歳まで暮らした盛岡の記憶はあまりないが、ある日謎の人物から盛岡のガイドブックが郵送されてくる。テレビの取材で盛岡を訪れた彼は、スナックに勤める世里子という謎の女性に出会い、子供のころの記憶が蘇る。彼女の正体は誰なのか。瑞々しく透明感のある映像が印象的。

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第2話 『前世の記憶』

監督:明石知幸
脚本:久保朝洋
出演:中村美玲 葛山信吾
結城しのぶ 島かおり 篠井英介

ひどい頭痛に悩まされる修子は、恋人に紹介された精神科医で治療を始める。そこで行われた退行催眠により出現したのは、修子の記憶であるはずのない別人の記憶。前世の恐怖に導かれていく修子が知った真実とは…。修子に纏わる恐ろしくも悲しいエピソードが心に残る作品。

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第3話 『緋い記憶』

監督・脚本:久保朝洋
出演:香川照之 光石研
柄本時生 渡辺真起子 螢雪次郎

東京でデザイン事務所を経営する山野義彦。ある日、郷里盛岡の友人の訪問を受け古い住宅地図を手渡される。そこには彼の封印された記憶の中の街だった。だが、地図にはあの少女の家が「空き地」とだけ記されていた。香川照之の少年時代を演じた柄本時生の個性が光る。

「おぼえているけれど-たぶんそれは自分に都合よく歪めた記憶」という原作者の言葉通り、人間には思い出したくないことを書き換えてしまう傾向があるのだろう。でも、いつかはこの作品の主人公たちのように、記憶の沼に沈めたものと対峙する日がやってくるかもしれない。それを考えると少しぞっとする。

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●『オボエテイル』 明石知幸監督(第2話『前世の記憶』) インタビュー

▼『オボエテイル』作品・公開情報
日本/2005年→2010年//125分
配給宣伝:生駒隆始
宣伝:ブラウニー
コピーライト:(C)2005(株)ベルウッド
※2011年1月8日(土)より、新宿K’s cinema、横浜ニューテアトルにてロードショー。

文:吉永くま
改行

  • 2011年01月08日更新

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