『セルアウト!』世界が不条理であっても。

  • 2009年11月21日更新

sell outネタ探しのためならどんな人物でも追いかけるパワフルTVレポーター・ラフレシアと、家電メーカーで働くきまじめサラリーマン・エリック。視聴者の求めるものは、人生のラストで告白する本音であることを確信するラフレシアは、「もうすぐ死ぬ人」探しに奔走していた。よりよい製品を作って売る使命感で働いてきたエリックは、予想外の展開で彼女の番組で共演することに。

11/22(日)シネカノン有楽町、24(火)朝日ホールにて上映。

このストーリーには、ひたすら成功を求める人間はどう行動するか?永久に壊れない製品を作ることはロジカルに正しいか?という難題をかかえた二人が登場する。二人を追いかけているうちに、物語がありえない方向に展開していく。お金、仕事、愛情はすべて現実において重要なものだけれど、それらを求めて行動しても、結果は偶然であり心底不条理。

そして不条理な現実には、コメディがつきもの。映画は、常識とされていることをことごとくひっくり返して、底抜けに愉快な世界をみせてくれる。あまりにも大きすぎて、わざわざ考えないでスルーしてしまっていることを、別の角度から見たら?という爆発的な想像力により、この映画はつくられている。監督は、「常識で行動する」「あたりまえのこととしてやり過ごしている」大問題を、「わざわざ」ここまで痛快な映画にしてしまったのです。

内容は、ブラックコメディ、ナンセンスコメディ、ありとあらゆるコメディ要素と、随所にミュージカルを織り込んだ斬新さ。三谷幸喜、ガイ・リッチー、クエンティン・タランティーノ監督を足して3で割ったよう。マレーシア社会を鋭く風刺していながら、数分おきに笑ってしまう、そして「あるある、こんなこと」「いるいる、こんなひと」と文句なしに共感してしまう映画です。第10回東京フィルメックス映画祭では、観てほしい作品のひとつ。

原題『sell out!』には、「売りつくし・売り切れ」の他、「見世物」「裏切り行為」という意味もあり。映画を観た人には、なるほどうなずけるはず。

▼作品情報
マレーシア/2008/110分
監督: ヨ・ジュンハン
原題: sell out!

文:ホウキョウ チアキ
改行

  • 2009年11月21日更新

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